たった一つが難しい　投稿者：唯我晶 　投稿日：09月05日(日)15時22分38秒

            　
      　あなたが、もうすぐ何らかの事情により死ぬことがわかっていたら、
      まずは何をしたいですか?

      「まず、ということは幾つかあるうちのどれか一つだけじゃないんですね」
      「…そうですねぇ、では言い換えましょう」

      　あなたが、これから数時間後に死ぬとして、それまでにひとつだけ
      やっておきたいことがあるとしたら、それはどんなことですか？

      「ひとつだけ、ですよねぇ…やりたいことが沢山あり過ぎて…」
      「そうでしょうとも。普通はそう思うか、全く逆でしょうからね」
      「えぇ〜。全く逆って、何もないってことですかぁ？」
      「そうだよ。どれかひとつに絞れるほどの大事なことがないから
      どれもきっと些細なことなんだろう、という経過を経た結論らしいね」
      「へぇ。そんなこと考えるような人もいるんだぁ」

      　あなたなら、いかがでしょう？

      「そうですね。死にたくないですよ…生きていれば、その間に
      自分がやりたいと思っていることに挑戦できる時間は残されるからね」
      「なるほど」
      「…ま、これが一番浅ましい答えであるかもしれないね」

      　死にたくない…この一言に尽きる。
      　彼はそう言ったけれど、言われてみて反論の余地もなかった。

      　たったひとつの願いを聞き届けてくれるなら…。
      「やはり、死にたくない…のひとつに尽きるだろうなぁ」