『テーマ館』 第29回テーマ「死にたくない」


今日という日がそんなにも大きな一日とは思わないが、それでもやっぱり
考えてしまう。 投稿者:通琉  投稿日:09月08日(水)15時07分34秒
            

        よく降る雨だ。いつ止むんだ?  本当に。
        いや、俺が知りたいのはそんなことじゃない。どうすればこの鬱々とした雰囲
      気を拭い去ることができるか、ということだ。天気のことなど気象庁にでも適当
      にまかせておくさ。いいや、判断を委ねるのだ。それでいい。
        だるいブルーズを聴きながら過ごすのも悪くはないな。しかし今手元にあるC
      Dはどれも狂い弾けるようなパンクばかりだ。とてもじゃないが今から新しいヤ
      ツを手に入れる気力などどこにもない。というか、買いに行くなんてできっこな
      いのだから。
        ニュースでは遠い国で起きた地震の情報。朝からずっとそればっかり。俺はそ
      れを横目で見ながら、とても美味いウーロン茶を啜る。これ以上ないほど美味い
      ので、氷を仕入れておくべきだったと後悔する。しかし、氷なんてものは常に作っ
      ておくべきものであって――いや、そんなことはわからない。いつも必要なとき
      に手元にないものが重要なのだ、とそういうつまらないことを頭の隅っこで感じ
      ながら、俺は茶を飲み干した。
        明日はいよいよ待ちに待ったイベントの日だ。今からすでに緊張して落ち着か
      ない。しかし、落ち着けと言うほうが無理な話であって、実際には内面の問題な
      のだ。どうなろうと勝手だ。遺伝子ってヤツのプログラム通り、感じるままにし
      ておくのが最も疲れないに決まってる。ようは単に、考えてもキリがないと、そ
      ういう話。
        しかし俺は今日、一体何をすればいいのだろう?  しっくりとくる答えが見つ
      からない。それが今の俺のイライラの原因なのだとは思うが、とにかく考えれば
      考えるほどどうしようもない泥沼にはまっていくことだけは確かだ。だらだらと
      テレビを見て、読書でもして、そうやって時間をやり過ごしていくのが一番妥当
      なような、そんな気がする。
        なにせ明日の今ごろ、俺はもうすでにこの世にはいないのだから。首をくくら
      れた後に何がどうなるのかなんて、そんなこと、誰に聞きゃあいい?
        俺はチェンネルを変えると看守向かって、「リモコンが壊れてるぜ」とウソを
      つき、つまらない最後の余興を思う存分楽しむことにした。

                          題名− 吉田拓郎 「たどりついたらいつも雨ふり」より