『テーマ館』 第29回テーマ「死にたくない」


必★仕事人 −霊界編− 投稿者:通琉  投稿日:09月10日(金)20時06分55秒
            

      ふたりの臆病な幽霊が、なにやらぶつぶつと相談事を―

      「あのな、俺だって好きでこんなことやってるんじゃあないんだよ。あくま
       で浮世の・・・もとい霊界の義理ってやつで、こんな仕事を引き受けたってわ
       けでさ」
      「なるほど。じゃ、おまえ幽霊辞めるか。いいんだぜ、それでも俺ゃあよう」
      「なんかどっかの特訓でのコーチの一言、みたいな言い方だな」
      「これでみんなを追込むんだ。そして『アッシらが間違ってましたっ』と」
      「オマエ、テレビの見過ぎだよ! それになんだよ、そのきらびやかな格好
       は・・・。さぞかし現世では金持ちだったんだろな」
      「お前さんほどではないがね」
      「(くっ・・・イヤミ)―まぁとにかく、あの例の大男ってのを俺達がビビら
       せてやらないことには、サチヨちゃんの身の安全は保障されないんだから」
      「あのさぁ、全国の 他の サチヨちゃんには悪いんだけど、もっといいネー
       ミング思い付かったのか? 『サチヨちゃん』なんて、天下のヒロインがそ
       んなダーティーな名前してていいのか・・・」
      「おっと! それ以上言うなよ! いいか、仮に名字が ノ○ラだとしても」
      「とすると恋敵は ミツヨ だな」
      「だからそれがやばいんだって!」
        
       なんだかんだ言ってるところへ、その「例の大男」ってのが現れた。あと、
       サチヨちゃん・・・すみませんっ

      「おい! 出たぞ! 大男っ」
      「・・・どっちが幽霊なんだか」
      「どうする? このままだとサチヨちゃんの貞操があぶないぜ!」
      「・・・確かに、サチヨって名前だと今一つ気合入れて守ってやりたい気に
       ならないな」
      「・・・だろ?」
      「―なわけないっ! 冗談だ・・・・・・と、とにかくまずは作戦その一だ」
      「パイ投げ合戦だね」
      「違う!どこにパイ投げでビビらす幽霊がいるんだっ!しかも合戦って・・・」
      「いや、いたら面白いかな、と」
      「面白くしてどうするんだょ。恐がらせてナンボだろが」
      「ああ、そうなのね」
      「幽霊歴何年だ、てめぇ」
      「さぁな・・・死んでから後のことなんて俺知らねぇ」
      「それ、現世にいたときのキメ台詞だろ?」
      「いや、っていうかこれを言った瞬間『ほぅ、そうか』ってボコボコに・・・」
      「・・・返す言葉がねぇよ」

       大男、サチヨにゆっくりと近寄りはじめる・・・

      「予想通りの展開です、幽霊その一さん!」
      「そうですね、その二さ・・・って! 俺達には名前すらついてないんかい」
      「作者曰く『他の幽霊に悪いから』だってさ。確かに、他の連中のことも
       考えると、とてもじゃないが数が数だからなぁ・・・」
      「せめてオマエさんが はっつぁん で」
      「俺がはっつぁんで?」
      「オレ、ジョニー」
      「・・・どっから見てもモンゴリアンのくせして、よう言うわ!」
      「むっ! 今の発言めっちゃ傷ついたぞ!」
      「足も短いし」
      「幽霊には足なんてないんだょ!」
      「まぁなんとなくそういう オーラ がな」
      「ちくしょう・・・なに笑ってんだ。まったく・・・(なんでわかったんだろう)
       ―――おい、大男、動き出したぞ」
      「ドキドキするな♪」
      「してどうすんだょ! 俺達がびっくりさせるって、さっきから言ってるだろ」
      「さっき?  そりゃ一体何時何分何秒?」
      「・・・オマエ、現世では嫌われてただろ」
      「・・・ご名答」
      「いいよ、まず俺が前に ぬぅ っと現れるから、びっくりして振り向いた
       瞬間、オマエさんが」
      「ぬぷぬぷっ・・・と♪」
      「違うっっ! デンデロデロデロ♪っとかだなぁ」
      「かわいいっ」
      「(なんだ、コイツ)・・・まぁそういうことで」
      「単純極まりない作戦だな」
      「いちいちうるさいョ!」
      「それとさぁ、一応掲示板の関係上、さっさ切りあげないとまずいぜ」
      「わかってるよ!」
      「それと、これ読んでる人、たまにどっちが はっつぁん でどっちがジョニー
       かわからなくなってるぜ」
      「・・・ボケが はっつぁん だ」
      「足の短いのが ジョニー だ」
      「(;_;)」
      「わかりやすい表現だし」
      「いくぞ! 援護しっかり! 頼んだぜ」
      「ブッラジャー!」
      「パクるなよ・・・国民的核家族型ほのぼの園児アニメを」
      「んもぉ♪ はっつあんのイケズゥ」
      「俺はジョニーだ!!」

       なんとなく騒々しい二人の幽霊に、気づき始めたそぶりをみせる大男。
       しきりに周囲を警戒しだす

      「れれ? 俺達のことに気づいたみたいだぜ」
      「なバカな! 目に見えるはずがないだろ、幽霊なんだから」
      「しっかりとしたアイデンティティをお持ちで。でももしかしたら霊感強い
       やつだったり・・・おい、なに震えてんだよ、ジョニー」
      「いや、やっぱ真っ正面からってのはちょっと」
      「うれしいのか?」
      「・・・恐いんだョ」
      「そりゃな、最初は誰だって恐い! しかしそれを克服していくことがまさ
       に生きて行くってことなんだ!」
      「幽霊の言葉だから説得力のかけらも・・・」
      「とにかく、俺はしっかり 後ろから援護 するから」
      「恐いんじゃねぇかよ、オマエも」
      「ふっふっふ・・・怖がりはなかなか死なねぇってな」
      「すでに死んでるんだって」
      「つべこべ言わないでさっさと出る!」
      「・・・や、やっぱヤだ」
      「この期に及んでまだ舌を切るか! きっと・・・痛いぞっ」
      「『シラを切る』だろ。それに全然例え的に間違ってるョ」
      「頼む、ジョニー・・・出てくれ」
      「・・・くそう! でもアイツ、本当にでかいな」
      「ああ、だから小さな巨人って呼ばれて」
      「ない」
      「とにかく出ろよ! 早く!」
      「・・・ヤダ。ヤダ―やっぱりっ」

       ふたり顔を合わせて

      「死にたくないっっ」

             終演