秋の気分　投稿者：はなぶさ 　投稿日：10月04日(月)22時55分43秒
       

      秋の訪れを感じつつ、晴れの公園で英治君はジョギングをしてい
      ます。高校生になった英治君はあまり運動をすることはないのに、
      今日はどうやら自主的に走っています。来週開催予定のマラソン
      大会で目立ちたくないというのが理由のようです。去年は最後に
      ゴールしたので、皆から拍手をもらってしまったのが辛かったみ
      たいです。

      英治君はその時の気持ちを思い起こすだけで、体が熱くなります。
      同時に首筋が冷たくなります。最後にゴールしたことが無いから
      拍手で迎えるんだろう、と英治君は思っています。逆に無視して
      くれた方がいいのにって。苦笑いよりも気づかないふりをしてく
      れたら、見ている方も楽だろうにって。

      汗でびしょびしょになったので、池の辺にあるベンチに座り込み
      ました。もう、どうでもいいと思ったりします。そして、この緑
      の水の中に飛び込みたくなります。ここならすぐに見えなくなり
      そうだから。ここには誰もいない方が皆にも、僕にも幸せなんじ
      ゃないかな。死ぬってことって幸せかも。

      とんぼが英治君の視線を誘い、見回すうちに遠くに逃げてしまい
      そう。足元の小石を拾い、とんぼに向かって投げようとしたけれ
      ど、当ったらどうしようと思い止めました。

      池に向かって明後日の方向に小石を投げてみたら、遠くで飛沫が
      上がります。緑の池に白い飛沫が上がります。なんだか不思議な
      気がします。そしてフト思います。わからないことがたくさんあ
      るんだな。あんなところにあんなに白い飛沫が潜んでいる。ちっ
      とも死ぬ気がしない。