酒中幻想　投稿者：いー・あーる 　投稿日：05月06日(木)21時34分30秒

      　どらごんを作った。

      　ころころと転がった、やたら首の長くて細い一輪挿しを拾って。
      　頭の代わりに口の大きく欠けた猪口をちょんとかぶせて。
      　目の代わりに突き出しにかかってた胡麻を二つ、御飯粒を練って、目の部分につけて。
      　きんぴらごぼうも、やっぱり御飯粒ではりつけて、前肢にして。
      　徳利のふくらみの部分には、割り箸の袋を二つに折って羽根代わりにくっつけて。

      　なんじゃそら、と言われたので、どらごん、と答えた。
      　相手は一つ息を吐いて、そのまんまぱくんと口を閉じた。

      　だから、そのまんまその即席どらごんを、放り投げた。
      　どらごんは、飛んだ。
      　ぱたんぱたぱたと、紙の羽根を動かして。
      　空っぽの胴体と、ふらふらする頭。
      　いまいち迫力には欠けたんだけど。
      　座卓の上を三回廻って。

      　で……
      　そこでそのまますとんと落ちて、がしゃんと分解してしまった。

      　調べてみたところ、どうやら羽根に使った割り箸の袋が、
      　濡れて破れやすくなってたらしかった。

      　かわいそうなことしたね、と呟くと、相手はまあいいんじゃない、と笑った。


      　座卓の上には、空になった徳利と、空になった皿と、空になった一升瓶と。
      　流石にジンの瓶は、まだ空になってない。