『テーマ館』 第27回テーマ「ドラゴン」


1999年7の月 投稿者:みどりのたぬき  投稿日:07月07日(水)18時35分42秒

      1999年7の月

      それは目覚めた。何千年ぶりの目覚めであった。
      数千年前、彼等は彼等を神と敬う人間たちと共に生きていた。
      そんなある日人間たちに予言が下された。
      ドラゴンたちが眠りにつかないことには人間が滅ぶと。
      ドラゴンたちは彼等を敬い、彼等の友でもある人間たちのために長い眠りにつくことにした。
      地中深く。..
      そして今、目覚めた。
      大きく翼を伸ばす。その翼は広げると数十メートルもあった。
      次々に目覚めたドラゴンたちは目覚めたことを知らせるために人間たちに挨拶にいくことにした。
      何匹かのドラゴンが飛び立ち、地上を見下ろす。
      地上の様子は数千年前とは大分違っていた。
      しかし人間たちの様子はあまり変わっていないようだった。
      ドラゴンたちは彼等が目覚めたことを知らせるために雄叫びをあげた。
      火龍は火を噴いて目覚めを知らせた。
      人間たちは彼等の目覚めをきっと喜んで迎えてくれるはずだった。
      しかし。
      ドラゴンたちを迎えたのは人間たちが中に乗っている空を飛ぶ物体だった。
      いつの間に人間たちは空を飛ぶことを覚えたのだ、と疑問を感じるうちにそれらが攻撃してきた。
      ドラゴンたちは驚いた。歓迎どころか攻撃されるとは。
      慌てて帰ろうとするドラゴンの仲間たちは次々と攻撃された。
      怒ったドラゴンたちは雄叫びを上げながら、人間を攻撃した。
      ドラゴンの叫びは人間には理解できない。
      それは数千年前も現代も同じであった。
      昔の人間たちはそれでもドラゴンのことを理解しようと努力し敬意を持って接してくれた。
      だからこそドラゴンたちは人間を友とし、彼等のために眠りにつくことを了承したのだ。
      しかし今、目の前にいる人間たちはドラゴンたちのことを理解しようともわかろうともしていなかった。
      『異質なもの』『自分たちに危害を加えそうなもの』でしかない。
      ドラゴンは悲しかった。目の前の人間たちは『畏怖を抱きつつも共存していく』ということを忘れている。
      しかし仲間のためにも自分のためにも戦わねばならなかった。
      そのうち最初に出かけたドラゴンたちの様子を見に他のドラゴンたちがやってきた。
      人間との戦いに合流する。人間たちの乗る飛ぶ物体は次々と墜落していった。
      ドラゴンは戦いながら、自分たちが眠りにつく原因となったあの予言を思いだした。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                      *
      『ドラゴンたちが眠りにつかないことには人類は滅ぶ。しかし眠りについてくれたならば人類の滅亡は何千年
      後かに伸ばされるであろう』