『テーマ館』 第27回テーマ「ドラゴン」


土曜のあさ 投稿者:ワンヒットワンダー  投稿日:07月09日(金)01時49分15秒

       たとえばドラゴンに翼はあったであろうか。
       そんなことをつい考えてしまう土曜日の午前中は、僕にとってはそれなりに必要
      な時間であるといえるのだが、周りから見ればとてつもなく不毛であると思われて
      も仕方がないのも事実であり<なにしろ僕はもうすぐお昼だというのに一向に起きようともせずにごろごろとしているのだから>耐えかねた母が、いい加減に起きな
      さい、といらついた口調で2度目の催促をしにきたが、僕にとっては無駄な事を考
      えるという大事な時間を邪魔する母のほうがよっぽど許せないのであって、もしも
      人のいらつきを計測する機械があったならきっと五分だな、とさらに無意味な事を
      考え、この瞬間だけが日常生活のあらゆる不安や疲れから開放される至福の時であ
      る、などという一端な理論を展開しながら、しかしそんな理論がいったい何の役に
      立つのか見当もつかず、目的を見失いかけた頃にドラゴンの翼の一件を思い出し、
      思考をそちらへ持っていきつつ、よく思い出したものだと自分を誉めたりするのだ
      けれど、もともと意味を持たないこの世界において発見や証明に対して賞賛するこ
      とがはたして正しいのだろうか、とますます発展する無意味な思考はとどまる事を
      しらぬ勢いで猛威をふるい、渦を巻いて交錯する激しさは僕に台風をイメージさせ
      るわけだが、イメージの台風の中でドラゴンはなんとも優雅なおよぎを披露し、強
      い雷によって彼はさらに強靭さを増幅させ僕の思考を完全に支配することとなる。
       激しい雷雨が去ったあとの空には眩い太陽が顔を出し、僕をほっこりとした気分
      にさせるのだが、それが無意味な夢であってくれと願う僕の幾度目かの祈りはやは
      り今回も叶わなかったようでシーツにくっきりとついたシミはまた僕をベットから
      起こすことを躊躇わせ、ふたたび僕を無意味な思考へと誘うことになるのだろうか。