ある竜のお話 投稿者:DAI@ 投稿日:07月19日(月)01時42分54秒 その竜は、自らを滅ぼすべくやってきた人間の勇者に向かって、こう問うた。 「汝、誰がために我を滅すか」 勇者は答える。 「世界の平和のため」 竜は問う。 「平和とは何か」 勇者は答える。 「人々が何者にも怯える事なく過ごせる時」 そして勇者は、言葉が終わらぬうちに、腰の鞘から白銀の剣を抜きはなった。 竜はその音を聞くと、ゆっくり首をもたげ、するどい牙を見せながら警告した。 「この世に恐怖なくして平和はあらず。勇者よ、お前は善悪の判断がつかぬ愚か者なのだ。お前のような人間がいる限り、世界を《平和》に導くことなど到底かなわないだろう」 勇者はそれを聞くと憤怒とし、トキの声をあげると、剣を掲げて突っ込んだ。 そして竜は深い溜息をつき、前の右足をヨコに薙ぎはらった。 「ある竜のお話 その2」へ