『テーマ館』 第27回テーマ「ドラゴン」


ある竜のお話 投稿者:DAI@  投稿日:07月19日(月)01時42分54秒

       その竜は、自らを滅ぼすべくやってきた人間の勇者に向かって、こう問うた。
      「汝、誰がために我を滅すか」
       勇者は答える。
      「世界の平和のため」
       竜は問う。
      「平和とは何か」
       勇者は答える。
      「人々が何者にも怯える事なく過ごせる時」
       そして勇者は、言葉が終わらぬうちに、腰の鞘から白銀の剣を抜きはなった。
       竜はその音を聞くと、ゆっくり首をもたげ、するどい牙を見せながら警告した。
      「この世に恐怖なくして平和はあらず。勇者よ、お前は善悪の判断がつかぬ愚か者なのだ。お前のような人間がいる限り、世界を《平和》に導くことなど到底かなわないだろう」
       勇者はそれを聞くと憤怒とし、トキの声をあげると、剣を掲げて突っ込んだ。
       そして竜は深い溜息をつき、前の右足をヨコに薙ぎはらった。

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