『テーマ館』 第27回テーマ「ドラゴン」


ドラゴンの住む国へ・・・ 投稿者:布施乱歩  投稿日:07月19日(月)15時35分01秒

      パパは どこへ行ってしまったのだろう?
      ママは 今 少女の手を引いていて くれたのではないの?
      少女は ひとりぼっちだった。
      広い 広い 大地にたった一人。照りつく太陽だけが 少女を見ていた。
      ふらふらと歩きつづける少女の顔には 何一つ感情が 浮かんでなかった。
      流れていただろう涙の後は もう 砂やほこりで黒いすじとなって 微かにわかるくらい―――。
      服も あちこち焼け落ちて 露出した肌に 血が黒く固まっているように見える。
      幼い少女に この世界を理解するのは 難しすぎた。
      少女の知っているのは 優しい パパとママの 笑顔と抱擁だけだった。
      瓦礫の山を もうこれ以上 怪我をしないで歩くだけで精一杯だった。
      少女に今できる事は 何もかも忘れて 『安静の地』とママが言っていた所へ行くことだけだった。
         ドラゴンの住む国。
        そこには多くの花や鳥がいて いい匂いがして――
       だれもが幸福(しあわせ)を感じられる所だって・・・、ママ、そこにはパパもいるの?
      少女のいる世界は 焼きただれた建物や 死臭が立ちこめるだけだった。
      ふと 少女は 遠い目で空を見た。
      「――私、あんな 遠い世界へ 行けるかしら・・・」
      そう思っていると 何かが空を飛んでいた、蒼い 蒼い 透き通った空に 一本の白いすじを残しながら。
      そしてそれは 何かを落としていった。
      それは グングン少女に近づいて来る。
      それは 少女のすぐ側で 爆ぜた。
      まばゆい光と炎の中で 少女は ドラゴンの住む国を見つけたと思った。
      そして 少女は喜んで ドラゴンの住む国へと旅だった。