第55回テーマ館「夢」



Rising sun in the dream 206 [2004/11/26 22:04:49]


躊躇わずトリガーを引ける様になるのに一時間とかからなかった。
スティンガーと手榴弾の炸裂音に慣れるのには1日かからなかった。
土煙と硝煙の臭いはいつの間にか気にならなくなり、
目に映る仲間の死体は、仲間だった「ただの物体」にまで成り下がっていた。

なのに―
命の搾取を行うたび「もう殺したくない」という思いだけが強くなっていった。

網膜に見方以外の人影が移りこんだ瞬間には無意識にトリガーを引き絞り。
死を齎す鉛の雨は人影が霧散するまでばら撒かれる。
殺したくは無かった。けれど、仕方ないのだ。
殺さなければ、こっちが殺されるのだから。
戦いたくは無い、もう殺したくは無い。
それなのに人影は幾間を空けず私の網膜に影を落とし、
次の瞬間には硝煙に包み込まれ、
饐えた臭いを残して風の中に散り散りになって吸い込まれるように消えて行く。
最後の時、マズルフラッシュの断続する閃光の先に居た人だった物たちは一体どんなこ
とを思いながら消えて行ったのだろうか。
私への憎悪だろうか?
それとも後悔の念だろうか?
どっちだっていい。
ただ、そんな最後は、そんな死に方は私はどうしても受け容れられない。
そんな死は不条理ではないか。
だから私は殺し続けるしかないのだ。
戦場で生きる意味を見失ってはならない。
例え、永遠に続く地獄の如き夢の果てに得た意味だったとしても。
たった、それだけの意味だったとしても。
ただ夜が訪れるたび、叶うならこの現実が悪い夢であるようにと、私は願うのだ。
なぜなら夢は朝が来れば必ず終わるのだから。
たとえどんな悪夢だったとしても・・・。

(良く分からないものになってしまった--;)



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