視線医　　by ゆびきゅ


      「さて、どうなさいました？」
      「先生、どうも視線が曲がってるみたいなんですが．．．」
      「そうですか、じゃ、網膜を外してみてください」
      「はい」
      「．．．．ほう、これはかなり第６４進化ウィルスにやられてますね。いや、
      今流行りのウイルスでね、今日のアクセスもあなたで12人目ですよ。
      あ〜何だっけ、そうクゼチルミカナオックスだっけ。そんな名前のウィルス
      です」
      「先生、どうすれば．．．」
      「本来なら、毎朝5分の網膜洗浄、酸化カリウム水溶液＋２での洗浄を
      お奨めしたいんですが、どうやらこれは．．．」
      「やっぱり変ですか？」
      「どこでこの網膜、手に入れられました？ いや、言わんでよろしい。最近
      では裏網膜の存在も、それを使用することも、ことさら騒ぐようなことでは
      ない．．．ないんでしょうからな。視線医の立場から、こんなことを言うのは
      遺憾なんですがね」
      「はあ」
      「カルテはお宅と、国民管理システム事務局に送っておきます」
      「え？ 先生、それで私はどうすれば」
      「斜めから見るか、何も見ないか、ですね」

(02月22日(日)23時23分37秒)