『テーマ館』 第16回テーマ「視線」



 視線  by kon


      視線 1

      「誰も僕を見てくれない。」
      「誰か僕を見て下さい。お願いです。」
      「僕は見るばかりで、見られることはない。」
      「そう、僕は視線。」
      「僕に応えてくれる視線ってないのかな?」
      『バシッ』
       視線と視線がぶつかって、ショートした。
      「嬉しい。誰かが僕を見てくれた。」

      「何ガンつけてやがんだよ。」
      ドス、ボコ、ボコ。

      視線2 ナルシストの王様

      あの頃はよかった。皆わしに注目してくれた。あの早とちりの床屋が、
      模造品とも知らずに、わしの耳をロバの耳と思って、皆に言いふらし
      てくれたおかげで、わしの耳を見ようと、群衆が城に押し掛けたものだ。
      しかし、それも過ぎたこと。もう、誰もわしのことなど見向きもしない。
      パレードをしても、沿道は閑古鳥が鳴いている。
      こうなったら、あれを実行するしかないか。

      王様は、誕生日にパレードを行いました。
      でも、やはり、王様のパレードを見ようとする物好きは誰もいませんでした。
      しかし、子供が一人、パレードを眺めていました。

      「あれは、裸だ。王様は裸だ。」

      「何だって?」
      子供の声を聞きつけた。大人たちが、集まってきました。
      「本当だ。王様は裸だ。裸だ。アッハッハッ。」
      沿道は裸の王様を一目見ようと、黒山の人だかりができました。

      王様は、群衆の視線を浴びて、至福の時を過ごしましたとさ。

      視線 3

      「どうぞ、お入り下さい。どうしました?」
      「どうも、誰かに見られているような気がするのです。」
      「誰かに見られている?」
      「そうです、誰かに見られているような気がしてしょうがないのです。」
      「詳しく話して下さい。」
      「どうも、異次元の世界から、見られているような気がするのです。」
      「異次元の世界?」
      「そうです異次元の世界です。」
      「それは、いつ頃からですか?」
      「つい最近のことです。」
      「最近ですか。」
      「そう、ごく最近です。実はたった今も見られているような気がするのです。」
       医者は、そこまで話を聞くと、腕組みをして黙り込み、そして言った。
      「実は、私もなのです。」
      「先生も、誰かに見られていると感じるのですか?」
      「そう、私も、何か異次元から見られているような気がするのです。そして、
      たった今も、見られているような気がしてならないのです。」
      「一体どういうことなのでしょうか?」

      『私が教えて上げよう』

      どこからか、得体の知れない言葉が飛び込んできた。

      『私は、異次元から、君たちのレベルでの実体化をしてやってきたのだ。』

      「どう言うことだ?」
       医者は、蒼白になって言った。

      『まあ、落ち着け、君たちの悩みは、すぐに消える。次のテーマに変われば、
      ほとんど誰も君たちを見る者はいなくなる。それに、この手の話は、よくある
      のだ。盗作と言っても過言ではない。』

      「はあ、そういうものですか。」
      『そういうものなのだ!分かったら、ここまで読んで下さった、皆さんにお礼を
      言いなさい。』

      「皆さん、ここまで、読んで下さりありがとうございました。」


(03月01日(日)23時07分13秒)