『テーマ館』 第13回テーマ「もしも・・・」



 「宇宙の始まり」      kon


「もし、タイムマシーンがあったとしたら、お前だったらどうする」
科学者のSが、いつも暇を持て余している、友人のKに話しかけた。
「そうだな、まず過去に行き、ゆびきゅさんが、テーマ館へ投稿しようとする直
前に、同じのを送信する。そうしたら、ゆびきゅさん、悔しがるだろうな」
Kは、こめかみに青筋を立てて、ヒステリックに笑った。
「相変わらず性格暗いな」
Sは小声でつぶやいた。Kはそれに気づかずに、まだヒクヒク笑っている。
「その他にないの?」
Sはあきれ顔でそう言うと、冷たい視線をKに投げかけた。
「そうだな、第二次世界大戦に、F16戦闘爆撃機を持っていって、アメリカ
に、原爆を20個くらい落とす。なんてのもいいかな」
Kは一層ヒステリックに笑った。
Sはあきれるのを通り越して、Kがなんだか不憫に思えてきて、
「もうちょっと、まともなのはないのかい?」
と、いたわるように言った。
「うーん、それじゃ、ちょっと、スケールをでかくして、神様に逢いに行く、な
んてのはどうだろう?」
Kは、少し真顔になって言った。
「どうやって?」
「時間ゼロの地点に行けばいいんだよ」
「どういう事?」Sは、首をかしげた。
「この世の中の物は全て、ビックバンの後に出来たんだろう。当然、時間も例外
ではないはずだ。つまり、ビックバンの起こった瞬間が、時間の始まりという事
になる。だとすると、ビックバン以前とは、時間ゼロの地点という事になるわけ
だ」Kは、たたみかけるように言った。
「それと、神様と、どう関係があるの?」
Sは、意味がつかめずに、もう一度首をかしげた。
「お前も飲み込みが悪いな」
KはSを、小馬鹿にするように、鼻先で笑うと先を続けた。
「ビックバンは、独りでに起こったわけじゃないだろう。ビックバンを起こした
奴が、必ずいるはずだ。そいつに逢いに行くんだよ」
「そうか、それが神様なのか」Sはやっと理解したというように、膝をポンと叩
いた。
「そうさ、さいつが神様さ」
Kは勝ち誇り、口元をだらしなく歪めた。
「よし、それじゃ、神様に逢いに行こう」
Sはこともなげに言った。
「何だって!」Yは驚いて、目を白黒させた。
「実は、タイムマシーンが完成したんだ。でも、最初に何処に行くか、決めかね
ていたんだよ。それでお前の意見を聞いてみたんだ。そしたら、神様に逢いに行
くなんて、なかなかいいアイディアじゃないか。それをいただくことにするよ」
Sは、Kの驚きを心から楽しむと、横目でチラリと見た。
「お前も行きたけりゃ、連れてってやってもいいよ」
「・・・・」Kは悔しそうに、唸った。しかし、タイムマシーンの魅力には、か
なわなかったらしく、
「俺も連れていってくれ」と、すぐに尻尾を振った。

 二人は、タイムマシーンに乗り込んだ。時間がゼロにセットされ、最後に出発
のボタンンが押された。
タイムマシーンは、まばゆい光とともに、音もなく消えた。

「おい、ところでビックバンの起こる前の場所って、どういうところなんだ」
Sが言った。
「それは、勿論、小さな点だろうな」
Kが気もなく答えた。
「そんなところに、俺たちが行ったら、一体どうなるんだ?」
二人に同じ思いがよぎり、沈黙が訪れた。
「大変だ!」二人は、同時に大声を上げていた。
しかし、もう手遅れだった。
タイムマシーンは、時間ゼロの地点、つまりビックバンの起こる寸前の、小さな
点の中に到着した。と、同時に、大爆発が起きた。
二人は、断末魔の中で悟った。自分たちが神様だったことを。

<11月29日(土)04時06分22秒>