第66回テーマ館「殺人鬼」



殺人鬼はDNA しのす [2007/07/15 05:58:42]


なぜあの女を殺したかって。
それは俺が殺人鬼のDNAを引き継いだからさ。

俺の父親は殺人鬼だった。
30人もの人間を殺して、山に埋めた。
父親にとって殺人は趣味だった。
他の人が切手を収集したり、サボテンを栽培したりするようにね、
人を殺したんだ。
結局捕まって、死刑を宣告されたけど。
最終的に刑務所の中では、もう誰も殺せないから、
自分を殺したんだ。

祖父も殺人鬼だった。
でも祖父の時代は良かった。
戦争さ。
戦争のおかげで、祖父は公然と殺人を犯せた。
国の後ろ盾を得て、人を殺しまくったそうだ。
古き良き時代、だろ。
俺もその時代に生まれたかったよ。

父親が捕まった後、母親と俺は殺人鬼の家族ということで、
今まで住んでいた家には居られなくなった。
小さなアパートに住むことになったが、
どこに行っても殺人者の息子として見られていると思うと
落ち着かない日々が続いた。
俺は精神的にまいってしまって、何もできない状態だった。
でも女を1人殺した時に、やっと気持ちが落ち着いたんだ。

そうか、これか。
この、人の命を奪うという感触、快感、
父親はこれを味わっていたんだ。
これが好きだったんだ。
そう思うと、何かがぞわぞわと背中を走り抜けた。
そして俺はすっかり吹っ切れた。
というか、俺の中の殺人鬼のDNAが目覚めたんだ。

ちがうよ、あの女が最初でないんだ。
俺は今までに15人殺してきたんだよ。
今回へまして捕まってしまったが、
その前に何人も殺しているんだよ。

いいさ、洗いざらい喋ってやるよ。
でもなんで殺したかは、聞かないでくれよ。
これは殺人鬼のDNAの仕業だったんだから。

「ちょーさん、とんでもない奴でしたね。
捕まえてみれば連続殺人犯。
動機は殺人鬼のDNAが殺させた、だなんて」
「狂ってるな。でもDNAで殺人癖が遺伝すると思うか」
「現にあの男がそうでしょ」
「そうかな。あいつの父親の血液型はAB、あいつはOだったんだぞ」
「えっ」
「あいつは母親が浮気して出来た子どもだったんだよ」


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