第66回テーマ館「殺人鬼」



老兵の苦悩 ジャージ [2007/09/28 00:57:24]


毎日のようにテレビでイラク情勢の報道がされている。
40年前と同じだな。
若い青年達が、毎日異国の地で血を流している・・・。

正義のための戦い?
ワシからしてみれば、戦場に正義もクソもない。

あるのは狂気だけさ。

1965年から2年間ベトナムに従軍した。
正義の名の下にな。

ワシの小隊が、とある村に到着した時の事だよ。
忘れもしない。
5〜6才の、おさげのかわいい女の子が、ワシらに花束を贈ってくれた。

が、

辺りに銃声が鳴り響く。

何が起きたかわからない。
気がつくと女の子は頭を撃ち抜かれて即死だった。
女の子を撃ったのは、ワシの小隊の伍長だった。

伍長は毎日の戦闘に精神をヤラれ、ヤクに手を出していた。
どうやら、女の子の花束が「爆弾」に見えたらしい。
ワシらの敵、俗に言う「ベトコン」たちは子供達をも「兵器」として使っていた
疑ってもしかたがないが・・・。

この娘には、いったい何の罪があったというのか?

だが、それは悪夢の序盤にしかなかったのだよ。
罪のない民間人を撃った事を隠蔽するため、小隊長は村人全員を射殺するように
命令を下したのだ。

武器を持たない農民たち、女、老人、赤ん坊までもだ。
農民達は誰も抵抗せず、ただ逃げるだけだったよ。
ワシらは命令で彼らを撃った。
「命令だから」と笑いながら村人を殺める者もいたし、
中には女を辱め、その後殺す者もいたよ。
・・・皆、何かが壊れていた。

『ベトコン拠点基地を発見した!航空支援を求む!』
小隊長の無線に応じた、海軍のF4戦闘機2機が村に爆弾を落としていく・・・。

村は一瞬で消えたよ。
燃え盛る村を見ながら、小隊長は言った。
「これで・・・いいんだ」と。

軍を除隊するまで、ワシの小隊のだれもが、この事実を隠してきた。
そして今も尚・・・。

『正義』の名目さえあれば、人は殺人鬼になってしまう。

願わくば、
イラクやアフガンにいるワシの後輩たちが、
手を染めず、無事帰って来ることを願う。

(元・アメリカ陸軍2等軍曹・ジャック=モーゼント)

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