第66回テーマ館「殺人鬼」



ナイフを突き刺す inspired by Hichcock's しのす [2007/09/30 04:05:49]


これはおもちゃのナイフだから
刺す真似しても大丈夫。
ほら、ナイフの先がひっこむだろ。

舞台稽古の時、
言われた通りにナイフを突き出した。
すると、
彼女の胸から血が噴き出して。

これ、本物のナイフじゃないか…。
一体どうして…。

どうしてって…。
おもちゃのはずが…。

とにかく楽屋へ。
気を休めて…。

私は彼女を殺してしまった…。
ナイフで突き刺して…。
ナイフで突き…。
ナイフで…。

「奴の顔、見たか。
本当に殺したと思ってたぞ」
「血糊と迫真の演技のおかげだな」
「新人に対するドッキリだよ、って
楽屋に行って教えてやらなきゃ」
「俺、行ってくる」
「俺も」


「ううう」
「や、奴が、ナ、ナイフを持って…」
「刺された…」


ナイフで突き刺す、快感。
忘れていたのに、
我慢していたのに、
思い出してしまった…。
だから…。





[ヒッチコック劇場『殺人学入門』を見ていて、
こういう結末かと思ったのを
少し脚色して書いてみました]




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