第６５回テーマ館「図書館」

期待したもの はなぶさ [2007/04/15　03:04:48]


期待していた通りにはならないもので、この場所に足を運んでも
思い通りの本にめぐりあうことはできませんでした。

期待と言うほど前向きな本を探しているわけではありませんが、
それを探して私はこの図書館に来て、さまよいます。
そして見つからないまま帰る時間になります。

エントランスを逆に進むと、外は青い空が黒くなってしまって
います。建物を取り囲む木々の間からは空の星が見えます。
水平方向には夜の繁華街のネオンがキラキラと光ります。

まだまだ夜になると肌寒い季節に、暖かい缶コーヒーを買って
建物を離れます。建物の窓の明かりが、少しづつ消えていくのが
わかります。

苦くて暖かいものを喉に流し込みながら、時折空を見上げて
ジョバンニが出会った列車を思います。
期待したものは私の頭の中を駆け巡っているような気がします。

あんなに多くの本が詰まっている建物にあるのに、あの本の百分の一
も読むことはありません。それでも知の歴史が詰まっています。
それでも私の頭にあるものに勝てません。
たぶん、きっとそうなのです。

苦い液体が私の脳神経に浸透して、心地よい冷気を私に受け入れ
させて、私を連れて行きます。自分の図書館へ。


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