第65回テーマ館「図書館」



手紙 2M [2007/06/26 15:21:39]


『6月30日…街の図書館でお待ちしています…赤い帽子が目印です。』

俺はこんな手紙を道で拾った。
一体、誰に宛てた手紙なのか?誰が出したのか?
特にその日は、図書館へ本を返す日だったので、ついでと言う事もあるが、
野次馬根性で待ち人がどんな人か見て見たかった。

6月30日…
時間が書いてなかったので、とりあえず会館時間に図書館に向かった。
流石に、人は少なかった。とりあえず、本を返して、一通り中をぐるっと
見渡してみたが、赤い帽子の女の子は見当たらなかった。
女の子かどうかは分からなかったけど、赤い帽子を男がかぶる分けないだろうと、
勝手な判断から俺の中では、赤い帽子の女の子と言う事になっている。

昼前…
外は小ぶりの雨が降ってきていた。
相変わらず、『麻衣』は現れない。
俺の中では、赤い帽子の女の子はいつのまにか名前まで付いて、『麻衣』と
言う事になっている。

こないだ借りた本の続きの話をずっと読んでいたが、
いい加減腹もすいてきたので、図書館の中にある食堂で軽く昼食を取ろうとした時、
中庭に赤い帽子が落ちているのが目に入った。
その瞬間ずっと忘れていた記憶がよみがえった。

「おにいちゃん…」

俺には2つ下の妹がいた。
昔はよく、親に連れられていっしょに図書館に来ていた。
今では、中庭には入ることができないが、昔はこの中庭でよく遊んでいた。
ある時、急に雨が降って来たので、一人図書館に逃げ込んで
いじわるで、妹を中庭に閉じ込めた事があった。
最初は、ほんの遊び程度の気持ちだったが、そのあと惨劇が起きた。

落雷だ。

ものすごい轟音とともに、妹は倒れた。
今中庭に落ちている赤い帽子は、その時妹がかぶっていた帽子と似ていた。
今日、6月30日は妹の命日だった。そんな事も忘れてしまったのか…
妹の名前は…

「麻衣…ごめんよ…」
俺は涙が止まらなかった。

http://ameblo.jp/adl1124

戻る