第60回テーマ館「嘘」



エイプリールフールの記念日 是雪 [2006/01/30 00:11:44]

デジタルな時計が、時刻0時を知らせている。
今日は4月1日だ。

いつもなら、閻魔様に抜かれる舌も、今日だけは許される。
いつもなら、泥棒になってしまうけど、今日だけは平気だ。

そんな事を考えながら君は部屋で、「3枚のおふだ」を読んでいる。
部屋の外・・・キッチンからはパパとママの声が聞こえている。
「どうせ、あなたは私なんかより、『ノリちゃん』って女の方がいいんでしょ!?」
「そんな事ない!!僕は君を世界で一番愛してる!!」
「嘘よ!!じゃぁ、この着信履歴は何!?メールの『今日は楽しかった(はあと)』っ
て何なのよ!!・・・・・・・・・答えられないんでしょ?答えられないんでし
ょ!!?」
一拍置いて何か、陶器か、ガラスか何かの割れる音。
君は、優しい音楽と、大好きなパパとママの声を聞きながら「3枚のおふだ」を読んで
いる。

「それは・・・・・。」
「ほら、やっぱり答えられないんじゃない!・・・・・それに、何よ!!このネックレ
ス!!あなたの部屋から出てきたのよ!!私にはこんなの贈ってくれないくせに!!こ
んなに綺麗に、ラッピングなんかして・・・・・!」
「まいったな、見つかっちゃったか。」
今度は何かがヒステリックに砕ける音。
それでも、気にせずに続ける君のパパ。

「ほら、今日は4月1日だろ?・・・僕らの結婚記念日じゃないか。だから・・・そ
の・・・君に何かプレゼントしたいと思って、そのネックレスを紀恵さんと一緒に買い
にいったんだ。」
「嘘よ!!」
「嘘じゃないさ。ほら、このネックレスについてる石、君の誕生石だろう?」
「え・・・・。そんな、だってあなた・・・・。覚えていてくれたの?」
「当たり前だろう?夫婦じゃないか。」

暫くして、片付けの音が聞こえてきた。君はまだ「3枚のおふだ」を読んでいる。
そして君は、今年はパパの勝ちだな。と呟いた。
嘘も方便。
そのことは君が一番知っているね。
だって、本当は子供が作れない事をしらないパパと美人で若いママの子供の君だもの
君のパパとママの嘘つきはきっと治らないって事を君は知ってるね。
でも、それは仕方ないよ。
だって。君のパパとママは4月1日に結婚しちゃったんだもの。
だから、地獄の閻魔様も、おまわりさんも、君のパパとママにはお手上げだよ。

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