第34回テーマ館「機械仕掛けの…/人造人間(アンドロイド)」


ロボット劇場 かも [2000/07/17 00:44:45]

 「ミッミルト君!やった!とうとう完成したぞ!」
「はかせ・・・・・・やりましたねっ。すごい。どこからみても本物の人間ですよ。」
 研究所の中は,何やら怪しげな薬品やら金属類の部品やらで,ごったがえしていた。
 それらのがらくたに埋もれるようにして立っているのは,髪に白いものが目立ち始めた白衣の
男と,目を輝かせている一人の青年である。
 二人は,下からの光に照らされて,目の前にある作品に見入っていた。
 部屋の中央の,まるで手術台のような装置の上に,その作品はあった。
「それでは・・・・・・スイッチONじゃ!」

 その日から,「太郎君」と名付けられ,彼は毎日働いた。表情を変えられるほどの高性能なロ
ボットではないが,教えたことは何でも素直に覚えた。

 そんなある日,2,3日出かけていたはかせが帰ってくると,研究室がいつもにもましてめ
ちゃくちゃに散らかっていた。奥の部屋からは,ミルトの困惑した声が聞こえてくる。
「ミルト君,いったいどうした?」
 ドアを開けると,太郎君を必死で押さえつけようと,ミルトが苦戦しているところだった。
「あっ,はかせ!太郎君がここを出ていくってきかないんです!もう,すごい力で・・・・・・
っうわぁっ」
 力まかせに吹っ飛ばされて,本棚にぶつかる。衝撃で本や箱が大きな音をたててミルトの頭の
上に落ちてきた。
 予想外の力にはかせは太郎君を力ずくで止めることを躊躇した。
それを見ると,太郎君は一転していつもの静かな彼に戻った。そして,
「お二人とも,今までありがとうございました。」
ぺこりと頭を下げた。そのままきびすを返すと,
「さようなランニング!!」
言い放つと,ものすごい速さで走り去っていった。
 あとに取り残された二人。
あまりのことにぼんやりとしたはかせが,
「ミルト君・・・・・・君はいったい何を教えたんだね・・・・・・。」
「あ,あははは・・・・・・はぁ,ダジャレを少々・・・・・。」
「もうすこし,マシなことを教えなさい・・・・・・。」
顔を赤くするミルトの肩にてを置き,ため息混じりに行った。
「やれやれ,実験は失敗か。なんで,太郎君は出ていったのか」
残念そうにいすに座るはかせの後ろで,ミルトはいきなり,声をあげた。
「こ,今度はなんだね!?」
「はかせっ,わかりました!太郎君はさっきのギャグがやりたかっただけですよ!」
「なんだって!?」
「覚えたことをすぐ実行するようにプログラムを組んだでしょう!それですよ!いやぁ,なーん
だ,よかったですねぇ。太郎君,きっとまた戻って来ますよ。実験は失敗なんかじゃありません
よ。大成功です!!」
 自分の言ったことに喜々としてはしゃぐミルトに,はかせは背中をふるわせて叫んだ。
「ばっかもーん!そんなことならさっさと連れ戻して来んかい!!」
「ひえっ,はっ,はいぃ〜〜〜っ!!」

 ミルトを見送り,部屋に一人残された。
はかせは,さきほどの駄洒落を思いだし顔をしかめては,同時ににやりと引きつる口元に慌てて
手をあてるのだった。