第34回テーマ館「機械仕掛けの…/人造人間(アンドロイド)」


拙者、人造人間故に、ネジなし 荒井バウンス [2000/07/30 23:43:03]

あまりにも暇すぎて、やることがない拙者は、毎日家でごろごろし、そんな日が2、3日続くと
頭がもう狂いそうになって、終いには、ネガティブな思考回路になり、死にたくなってしまうの
で、そんな日は近所の多摩川に出かけ、酒を飲んだ。いい塩梅に酔っ払い、ふらふらと川原を歩
いていると、一人の男が川の中に入りぶつぶつつぶやいていた。男はいきなり拙者にむかって、
「動かないで」
などとぬかす。突然の他人からの命令形の言葉にすこし不機嫌な面持ちになりながらも、拙者は
「何してるんですか?」
と、やさしく、そして紳士的にその男に尋ねた。
「ねじを落としたんです」
「へっ」
「ネ・ジ」
「何処のですか?」
「ココ」
そういうと、男は自分の頭を指差した。
「頭のネジが外れたんです」
「・・・・・」
この人、真顔で言ってるけど、ジョーク?それとも気が狂っているのか?
「あ、あった!んっ違った・・」
「おっこれか!いや違った・・」
「今度こそ!・・・・・・違う」
男は次々と川からネジを拾い上げ、「違う」とつぶやいては、川原にネジを投げ捨てた。
それにしても何でこんなに川の中にネジが沈んでるのだ?いったいこの男は何者なんだ?
拙者、そんな事をポーっとして考えていると、その男が、こちらに向かって、何かを投げた。
「それ、君のじゃない?」
投げられたそれは、ショートピースくらいの大きさの巨大なネジだった。拙者はそれをつまみあ
げ、男に尋ねた?
「何でこれが俺のネジなんですか?」
「いや、単純にそうかなーなんて思って!はははっ」
拙者は頭に来た。そのネジのあまりのでかさに、(お前の頭、そのくらい抜けてるんだよ)っと
いう意味にとらえた。単純に馬鹿にされたのとおもった。酔っ払っていたのも手伝い、普段から
気の短い拙者は、その男に殴りかかった。男は突然の拙者の暴挙に
「なっなんだよ、いきなり」
とかなんとか喚きながら、逃げ惑った。
「変な事ばっかいってんじゃねー、馬鹿」
「馬鹿、おまえこそ馬鹿。何もわかってないんだよ。」
「なにがわかってないって言うんだってんだよ!このキ$$$野郎!」
そう拙者が言うと、男こう叫んだ。
「うるせー、倒産したネジ屋のネジの不法投棄してんだからてめー、あっちいけよ!!」
拙者、絶句し、そのままとぼとぼと家路を急いだ。
家に帰り、ジャケットのポケットに、あのショートピース大のネジが入っているのに気づき、す
ぐさま、その忌まわしいモノを取り出した。よく見ると、あながち本当に拙者のネジかもしれな
いと思った。なにしろ、その拙者から抜けたと言われたネジは、プラスのネジだったから。