『テーマ館』 第32回テーマ「狂気」


遺伝子の狂気。 らいくん 2000/02/27 06:21:04


       徒然なるままに…。
       この時が来るまで、何気ない生活を送っていた私がいた。
       今までに、いろいろな経験を得たと思っていた私がいた。
       失敗した結果を否定してでも力にしようとした私がいた。
       私が生きられる時間をもっと長くしようと思う私がいた。
       もっと勉強できると思って一生懸命に努力する私がいた。
       絶対あの人なら信頼できると思い、金を貸した私がいた。
       この人となら私は一生共に出来るという恋する私がいた。
       TVの情報を信じている私が心地よいと認める私がいた。
       いつかはこの普通な生活を抜け出そうともがく私がいた。
       自分が遺伝子によって生きている事を否定する私がいた。

       ある日、私の遺伝子が明記された書面が家に届いた…。

       ---- あなたが請求された遺伝子情報をお届けします ----

       あなたは、この文面をいろいろな人生概念や現実を考慮し、
       自分や社会を否定しながら最後まで読む事になります。
       この事によって、あなたはこの文章を読んでいる最中、
       このあなたの事実が書かれた文章を否定しようと思います。
       でもあなたは、好奇心によって最後までこの文章を読んでしまう事でしょう。
       (注意:この遺伝子判断の書面は遺伝子情報によって、最後までこの文章を読み、
       それを受け入れて、他人に公表しない人物にしか送られていません)
       ---- あなたのDNA分析結果です ----
       あなたの寿命は今この文節を読んでから残り約4分です。
       あなたは今後、いくら努力しても得られる知識はありません。
       あなたが今、他人に貸しているお金は絶対に戻ってくる事はありません。
       あなたが今愛している人は、あなたが今日死ぬために2ヶ月後に新しい恋人をつくります。
       これ以上の文面は、あなたの死に対して無意味になるので控えさせていただきます。
       遺伝子情報調査委員会をご利用いただき、ありがとうございました。
       あと数分で、市役所よりあなたの元へ死亡確認にうかがいます。