『テーマ館』 第32回テーマ「狂気」


狂気の連鎖 らいくん 2000/03/26 05:01:33



       ある病院にあと3日しか生きられない少女がいた。
       少女はその事実の全てを、あるほんの小さな切っ掛けから知ってしまった。
       そして今日初めて、親に反発した。

       少女:「わたし、死ぬんでしょ。あと三日の命だってね」
        母:「え?」
       少女:「友達から聞いちゃった。なんか、まわりの人がすごく優しかったから
           変だと思って聞いてみたの。そうしたら友達がね私の命…」
        母:「………」
       少女:「やっぱりそうなの?」
        母:「まって、誰にそんな話し聞いたの?」
       少女:「親友の子。私のお見舞いに来た帰りに、お父さんから聞いたって」
        母:「え? 真奈美ちゃん?」
       少女:「うん…」
        母:「本当に?」
       少女:「うん…」
        母:「あなたが死ぬなんてあるわけないでしょ。そんな話し私、全然聞いてないわよ」
       少女:「………」
        母:「先生があさって退院出来るって言っていたのよ。そんな事有るわけないでしょ絶対。
           どっかで、ウソついている人がいるのよ。父さんがそんな事言うわけないし」
       少女:「じゃあ、真奈美は、なんで私の事死ぬっていったの?」
        母:「なんか、勘違いしてるんじゃない? 母さんもわからないけど…安心しなさい。
          あさってには絶対退院できるから」
       少女:「お母さんウソついてるでしょ」
        母:「ついてないわよ! 大丈夫だって」
       少女:「本当に?」
        母:「ええ。絶対大丈夫よ」
       少女:「でも私、怖いよ…」
        母:「なに、怖がってるの? 母さんがウソついたことある?」
       少女:「ない…」
        母:「だから、私を信じてよ」
       少女:「うん…」
        母:「じゃ、今日は帰るわね。気を確かにね。絶対大丈夫だから」
       少女:「うん…」

       その後、病院のロビー
        男A:「どうだった?」
        女:「大丈夫。だてに18年も育ててないわ」
        男A:「お前の旦那は? 何かしでかしてないか?」
        女:「それがね、ちょっと失敗しちゃったみたいなのよ。
           あの子が死ぬって彼に納得させたら、それをあの子の親友に喋っちゃった見たいよ」
        男A:「なんだと!」
        女:「ごめん。でも、大丈夫よ。さっきごまかして来たから」
        男A:「そうか…。まぁいいか。後でお前の旦那も金蔓にすればいいわけだし」
        女:「そうね。いくらぐらいになるかしら?」
        男A:「まぁ、好き勝手出来るくらいの額が入るだろう」
        女:「そうしたら、海外つれてってくれる?」
        男A:「ああ。もちろん」
        女:「約束よ」
        男A:「ああ。安心しろって」

       その後のその後、病院の玄関
        男B:「で、どうだった?」
        男A:「奴は完全にこっちのものだよ」
        男B:「感づかれてないだろうな?」
        男A:「安心しな。あの女俺のこと愛人だと思ってる」
        男B:「そうか。ならいいが? で、いくら入るかわかったか?」
        男A:「そうだな、4億程度かな?」
        男B:「安いな」
        男A:「なんて事いうんだ? 俺だって頑張ったんだぞ」
        男B:「ま、しかたないか…」

       その後のその後のその後病院の電話
        男B:「ボス…。今回4億くらいにしかなりませんよ」
        ボス:「そんなんじゃ。俺の女が納得しないぞ」
        男B:「でもこれ以上は無理っぽいんです」
        ボス:「なら、お前300万でいいのか?」
        男B:「それは、ないっすよボス。一桁あげてくださいよ」
        ボス:「黙れ。そういうなら、10憶くらい稼いで来い」
        男B:「ちょっと、無理っぽいんですよー」
        ボス:「うちらの規則忘れたか?」
        男B:「5憶までは下っ端って事ですか? でも4憶だって十分じゃないですか?」
        ボス;「規則は規則だ!」
        男B:「わかりましたよ。頑張ってみますよ」

       その後のその後のその後のその後のボスからの電話
        ボス:「志保ちゃん、4憶の保健しかかかってないって」
        志保:「まってよ、オッサン。私何の為に入院してると思っているの?」
        ボス:「それは、俺の為だって思っているけど…」
        志保:「お母さんだって、だましてるのよ!」
        ボス;「でも志保ちゃん、入院してからじゃ保健なんてそう簡単にあげれないでしょ」
        志保:「でも、私の体とすり替えて死ぬ人がいるんだし、8憶くらいまでは保健あげてよ!」
        ボス:「そんな事いったって部下が、出来ないっていうんだもん」
        志保:「そんなんじゃお父さん殺すほうが儲かるじゃない!」
        ボス:「志保ちゃんは頭いいねぇ。じゃぁ、そうする?」
        志保:「それでも良いけど、私が入院した意味ないじゃないのよ!」
        ボス:「そうかぁ。身代わりまで用意したんだもんね」
        志保:「そう。 結局は最後に手元に残ったお金よ! 人生なんてそんなものよ!」
        ボス:「そうだよね。わかった。がんばって考えるね」

        その後のその後のその後のその後のその後の志保からの電話
        志保:「お父さん、やっぱ私、安いってさ」
         父:「そうか、志保。せっかく友達にも言ったのにな」
        志保:「やっぱお母さん中途半端だよ。私に安心しなとか言ってたしさ」
         父:「そりゃ、あの女なら言うだろ。あいつ金欲しいだけだし」
        志保:「でも、安いよ今私たったの4憶だよ!」
         父:「そっか。じゃ、もっと考えるわ」
        志保:「たのむよお父さん!」
         父:「わかった」

        その後のその後のその後のその後のその後のその後の父からの電話
        父X:「真奈美ちゃん、だめみたい。4憶しか入らないって」
       真奈美:「えー? そんなのやだよ。おじさん」
        父X:「しかたないね」
       真奈美:「おじさん、なんとかしてよ。いくらでも体いじっていいからさ」
        父X:「でも、しかたないよ。やるだけやったんだし」
       真奈美:「そんな事いたってさ…」
        父X:「ぐぅあっ!」
       真奈美:「あ、打たれたわね。やった。うまくやったわね…志保。これで8憶ね…」

        時に、こんな狂気に満ちた奴達が世間にいる。