『テーマ館』 第32回テーマ「狂気」


perpetual stream(of memory playing) namida 2000/03/26 15:00:11


      を進むと街灯に照らされた一角へ出た。

      背後からの圧迫はなお凄まじい。靴底を通して伝わる振動が
      機械的リズムで徐々に大きくなる。そうそれはとても機械的。
      振り向いて滴る汗一つ。それが地面に落ちるのと同期して
      再び大きく振動する世界。空気を深く吸い込むと、粘度の
      高い暗黒と神経質な音が全身に浸透した。
      かの物体は金属絡み合う可動部の押し殺した摩擦音が聞こえる
      距離まで近づいた。秒間六十回投げかけられる街灯の光波のもと、
      物体はその無垢な少年の貌を明らかにした。
      鋼鉄細工の芸術と重機械たる獣性、そして純粋の同居。
      盲目にして無貌のもの、『ありえざる物体』は
      既に汗も消えた男に圧倒的破滅の腕を差し伸べ、
      彼を始めからどこにもいなかった設定に改めた。

      そこで世界を構成するパーツは全て崩れ落ちた。
      靴ひもの解けたまま海岸を走りながら、陽を反射して
      フラッシュのように眩しく光る水面を眺め、という場面は
      今までにもう74168409回再生されたにも関わらず、
      それが全体の何割を占めるのか、それすらも解らない。
      あと少しで終わるのかも知れず、まだ始まったばかりなのかも知れなかった。
      突然、上空に自分を知る誰かの巨大な両目が現れ、じっと見つめる。
      そのままどれだけの時間が流れただろう。ヴィジョンの再生は
      さっきので最後だったらしく、エンディングのクレジットが
      もう139801分スクロールし続けていた。
      また、どこか遠くで音楽が鳴っていたことにふと気付く。
      それは一時も途切れていなかった。もう何万年も。
      そしてこれからもずっと。

      思い出したように路地裏に立っていた。地面が雨に濡れている。
      風の中に初夏特有の新芽の匂いが混ざっていた。
      近くにある小学校の校舎から、生徒たちの合唱が聞こえる。その歌は確