『テーマ館』 第32回テーマ「狂気」


狂想曲。 SOW・T・ROW 2000/04/14 11:30:12



      はっきり言えば、どうしようもないだろう。
      私が好きな人は、私よりも自分の事にしか関心が無い。
      私が目の前で何をしようとも、彼はそれを空気に様にしか思わない。
      話した事はない。彼にとって、言葉とは情報交換時にしか使わない物だ。
      例えぶつかっても、押し切られてしまう。話し掛けても聞こえてない。
      だからと言って、人間ではないと言う訳ではない。列記とした霊長類ヒト科だ。
      精神に異状を来している訳でも無い。社会生活では、サラリーマンとして日々働いている。
      迎えに行った事もある。雨の日に傘を差してあげても、その下から自分の傘を差してしまう。
      ご飯を作っていてあげても、自分で作って、自分で食べてしまう。
      嫌われていると言う以前に、もう私はそこに存在しないものとされているようだ。
      だからと言って、私が幽霊であるわけではない。友達もいる。
      「それでも、好きなの?」と言われても、私は頷くだけで、理由は自分でも分からない。
      まあ、馬鹿だろう。それしか言いようが無い。そんな事をして何が楽しいのだと、
      何を自分はしているのだろうと、毎日のように思う。でも、気付けばそこにいる。
      ストーカーではないとは思っている。彼がそうなのは、初めて出会った時からだから。
      経緯は、残念ながら覚えていない。全く、どうしようもない。
      とにかく、私は彼のそばにいようとしている。いても、彼は何も言わない。
      勿論、毎日反応を求めている。でも、いつでも裏切られる。人生を、私は棒に振っている。

      私は狂っているのかもしれない。でも、それでいいと、思っている。