bonehead ゆびきゅ 2000/04/19 16:36:00
思い出せない。
目覚めた時から、頭のスミに引っかかっている灰色の記憶が、きれいに鼻を抜けて出てこない。
イライラする。
ひとさし指でテーブルをコツコツ叩くが、爪が痛くなるばかり。思い出せない。
爪が割れたので、今度はテーブルの裏をつまさきで蹴る。テーブルの上の皿やらティーカップ
やらが規則正しく踊り上がり、耳障りな音をたてて次々と割れる。
あーイライラする。
これでは会社に行っても、仕事が手につかないではないか。
ゴルフクラブを手にとり、部屋中のものにヘッドを叩きつける。
テレビは火花を散らし、花瓶は粉々に、テーブルは膝から崩れ落ち、壁には目玉のない眼窩が
いくつも。
もう少しで思い出せそうな気がする。
何かきっかけさえあれば。
「あなた、何してるの!?」
驚愕に青冷めた顔が目に入るや否や、渾身の力でクラブを妻の頭に振り下ろす。
すべての音が消え、クリーム色の脳漿が雨のように降る。
頬に降りかかったそれをひとなめする。
思い出した。
昨日の夕食はクリームシチューだった。