第50回テーマ館「記念」



今日1日 Viva [2003/07/09 12:37:32]


目覚ましの電池が切れていたので寝坊した。
飛び起きてスーツに着替えたが、あわてていたため裾を踏みつけ破ってしまった。
ゴミを出したら「分別されてない」と近所のおばさんに怒られた。
定期が切れていた。
ホームに到着した電車に飛び乗ろうとしたが無常にも目の前で扉は閉まり、激突した。
「駆け込み乗車はやめてください」と駅員に怒られた。
ようやく乗れた電車の中で痴漢に間違われ、危うく警察沙汰になるところだった。
タイムカードを押したら始業時刻1分過ぎだった。
汗だくで女子社員に露骨に嫌な顔をされた。
何年か振りのダッシュで息が上がり、まともな返事も出来ず上司に叱られた。
食べたかったA定食が俺のひとり前で売り切れた。
定時直前に彼女からメール。「今日の約束忘れてないよね?」思いっきり忘れていた。
そんなときに限って残業を頼まれた。
なんとか1時間で切り上げて彼女の元へ再びダッシュ。

「お疲れ様〜仕事大変だね」
かわいい彼女の笑顔で心が癒された。
「はい、これ。」
渡されたプレゼント。はて・・今日は何の日だったか・・?

「付き合って1年なんて早いね!欲しがってた時計だよ。私がお願いしたブランドのバッ
ク、買っておいてくれた?」

あぁ・・今日は付き合って1年目の記念日だった。
朝からのごたごたですっかり忘れていた。ついでにプレゼントを買うことも忘れていた。

「・・忘れたの?じゃあ今から・・お金ないの?・・・今日のことも忘れてたですっ
て?」
人の顔が鬼の形相へ変わる瞬間を生まれてはじめてみた。
俺に渡したプレゼントをひったくると彼女は
「大事な記念日を忘れるなんてサイテー!バイバイ」
と捨てゼリフを残し身を翻した。

今日は記念日だったのかぁ・・
俺の視線の先には別の男に電話をかけている彼女の後姿だけがぼんやりと映っていた。

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