第50回テーマ館「記念」



石の姿(「風の姿」にインスパイアされて) しのす [2003/08/03 18:35:49]


遙か昔、遠い場所に素朴な村があった。
その村の広場には石像が立っていた。
それは二人の人間のようだった。
一人は剣らしきものを空に突き上げていて、
もう一人はひざまづいているように見えた。
像の前には石碑があったが、古語で書かれているため誰も意味を知らなかった。
誰が何のために造った像なのか誰も知らなかった。
村の過去を知る者は大きな戦いの際に死んだため
村の歴史は語られていなかった。

ある日旅人が村を訪れた。
旅人は古語の解読をしていると言った。
彼は村に一ヶ月滞在し、石碑の解読に取り組んだ。
そしてとうとう石碑を解読に成功したと言った。
「これは遠い昔の戦いで悪魔を封印した二人を
記念した像です。この二人が村を救った訳です。
そしてそれを祝福する方法が書かれています。
昔は祭をして二人を祝福をしていたのでしょうか」
旅人は村長にその方法を教え、解読に費やした5冊のノートを渡すと
去っていった。

村長は村を救ったと言われる二人を祝福するために
旅人に教わったとおりに祭を行うことにした。
その祭は満月の三日前から開くことになっていた。
石像の上で生きたまま牛の腹を切り裂き、
像の周りで若者達がある呪文を唱えながら三日三晩踊り続け、
村人達は火を焚き続け、ドラムを叩き続けるというものだった。
村長は村人達に指示し、祭は始められた。

やがて満月を迎えた日の夕方、旅人が村を訪れた。
その旅人は以前村を訪れた旅人とは違う人物で、
村の祭に興味を持ち、その由来を尋ねた。
村長は以前村を訪れた旅人が石碑の古語を解読したことを教えた。
旅人は「私も古語の分析には興味があります。
是非前に来た人の分析結果を見せてください」
村長は前の旅人が残した5冊のノートを旅人に手渡した。
旅人は村長の家でノートを熱心に読んだ。

満月が空に上がる頃、旅人は広場に走って来た。
広場ではドラムの音と村人達の雄叫びで溢れていた。
旅人はその中から村長を見つけ出すと言った。
「たいへんです。
あの文章の解釈は間違っています。
あの二人が悪魔を封印したのではなく、
二人の悪魔を封印したと解釈するべきなのです。
そして祝福ではなくて、解放という意味です。
つまり今あなたたちがしていることは…」
旅人の言葉が最後まで話される前にその声は途絶えた。
旅人の頭が切断され、ドスッと地面に落ちたからだ。
遠い昔、村人達を惨殺した二人の悪魔の封印が解かれ、
石から蘇り、そして…


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