『テーマ館』 第20回テーマ「勘違い」
「無意味さ NO.1」 by ひふみ
「犯人はお前だあああ!!!」
そういって警部が指差した先には・・・・・雑踏があった・・・・
「だあああああ!!何するんですか、警部!!」
僕は慌てて警部をおさえると、こっちをじろじろ見つめて通り過ぎる人々の視線
を避けながら近くの物陰に逃げ込んだ。すぐに目標を探すと、目標は気づいた様子
もなく、先のほうに行っている。
「だるい、つまらん、かったるい、・・・・全然おもしろくない・・・・」
警部はと見てみると、ぶすったくれた顔をしてぶつぶつ呟いている。
・・・やれやれ・・・・・
今回の仕事は特別任務だった。一週間ほど、日本観光を楽しみたいので
その間、本人に気づかれないように見張ってほしい。まあ、どこかで聞いたことが
あるような、と言ってしまえばそれまでだが、実際、そこまで本人の意志を尊重
するのも珍しい条件の要人警護を任された僕たちは、対象・・・ミステイ国の
若き国王、カンチーガ=ミステーク氏の後をつけていたのである。
と、まあ、それだけなら別に警部もごねたりせずに、おとなしく仕事をしてたの
だろうが、間違いは、”自分と同い年で国王なんてどんな奴だ見に行こう”と警部
が言い出したのがきっかけだった・・・・・
えらそうにふんぞり返って国王に近づく警部。やあやあと親し気、もとい、
なれなれしげに声をかけたとき、若きダンデイーはにこにこと微笑むと懐から
飴を取り出したのである(子供と思ったそうだ)。
・・・・・もう、後は混沌の極み。警部は、人種差別だ!とか、外人横暴とか
叫びながら暴れ始めるし、警察上官たちからの説明により、国王が、オー!ワンダ
フル!とか、ファンタスッチックとか言ったもんだから、いっそう警部が逆上して
手が付けられなくなって。正直、警部が子供扱いされるのをあんなに嫌がる事を
知ったのはそれが始めてだった。(しかし、あんたそんな外見してんだから仕様が
ないだろうに・・・日本人でも間違えるぞ、普通・・・)
結局、そんなこんなで警部が臍をまげてしまってこうやってごねまくってる
わけなのである。
「しっかし、あいつ何時までうろうろしてるつもりだ。」
たしかに若き国王はさっきからあっちをうろうろ、こっちをうろうろ、とかなり
元気に動き回っている。おまけに見た目も結構かっこいいもんだから路行く人が
みんな振り返って見ている。ほんと目立つ人だ、警部とは違う意味で・・・
「でも、あれで警部と同い年なんですよねえ・・・」
僕がしみじみと呟いたとき、警部が鋭い視線で僕を睨んでいた・・・・
その目が”なんだよう”と語っている。たまらず僕は続く言葉を放った。
・・・・・
「・・・・だんちがいだ・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・ほんとに、それがオチ?・・・・・」
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(投稿日:07月07日(火)15時33分26秒)