「7月初旬」 by はなぶさ 梅雨のある日の雨の中、私はいつものように通勤途中で、墓地を横切った。そ んなときに、鈴虫の鳴き声を聞いた。蝉の鳴き声よりも先に鈴虫の鳴き声だっ たので、私はつい微笑んでしまった。 その日の夕方、何もせずにテレビを見ていると、母親が重そうな買い物袋を抱 えて帰って来た。台所のテーブルの上に買ってきたものを袋から出して並べる。 私はそれを近くで見ていた。そして、一升瓶に入ったヤキソバソースを見た。 瓶に貼ったラベルには業務用と書いている。母の口振りからすると普通のウス ターソースが安かったと言っているようだ。私は笑いながら、教えるタイミン グを測っていた。 その夜は次の日が休みであると思い込んで、安らかな眠りについた。 (投稿日:07月12日(日)13時34分21秒)