『テーマ館』 第20回テーマ「勘違い」



 ちょっと古いネタ第一弾(二弾以降の予定はない)「勘→完→寒」   by すぎ


       何の変哲もない、アパートの一室。
       ごく普通の青年。
       別に、これからSFもののストーリーを繰り広げる、わけではない。
       彼の抱えている重大な問題。
       「昼飯を何にするか」である。
       
      『今日の昼飯、なんにしようか・・・。
       
       を!そうだ!
       あれがいい。あれにしよう!
       さっき、テレビでやっていたやつ!』
       
       トゥルルル・・・
       カチャ
       
      「はい!毎度ありがとうございます!こちら、○○ピザです!
       ご注文は?」
       
      「・・・え?
       ・・・そのようなものは、当店にはございませんが・・・」
       電話に出たアルバイトの女の子は、ちょっと困った顔をする。
      『ない?・・・そんなはずはない。
       テレビで、有名だとやっていたんだ。
       有名ってことは、どこのピザ屋にも、あるはずなんだ』
      「いや、でも・・・。
       はあ、真ん中が、・・・高くなっている・・・」
       そのピザの特徴を、紙に書き留める。
      「少々お待ちください」
       電話を置き、ダッシュで厨房へと駆け込む。
       
      「店長。
       こういうピザって、うちにありますか?」
       店長も、不思議そうな顔をする。
      「さあ、こんなピザ、聞いたことも、見たこともないぞ」
      「そうです・・・よねぇ・・・」
       
      「もしもし、やはり、そのようなピザは、うちにはありませんが」
      『いや、どうしても食べたいんだ。
       なければ、オリジナルで作ってくれ!』
      「・・・えっ・・・でもぉ・・・」
       女の子は、もう泣きそうだ。
      『いいか、真ん中に、高いデコレーションがあるんだ。
       少し傾いていて、倒れそうなやつだ。
       
       もう一回言うけど、名前は、シャトーって言うんだ。
       ピザのシャトー』


(投稿日:07月12日(日)17時42分42秒)