第36回テーマ館「モンスター」



悲劇の最後 shisyun [2000/11/06 18:10:57]

モンスターは、いつも人間のわがままな才能の欲望により、
作られることが多い。
作られたモンスターは、自分がこの世に生まれた理由が見いだせなくて、
かならず悲劇の最後を迎える。

ここにも、その悲劇を繰り返そうとする愚か者がいた。
「博士! 今、融合完了しました」助手は叫んだ。
「そうか、いよいよだな。ふたを開けてみよう」
実験室の中央にある不気味な大釜の蓋を助手はあけた。
「博士、だめです。失敗です」
助手の報告に博士はうろたえた。
「そんな馬鹿な、理論上は成功のはずじゃ」
博士は慌てて、大釜の中を覗き込んだ。
硬直した顔に笑みがこぼれた。
「馬鹿もん、よく見ろ。成功じゃ」
助手は驚いた。
「博士。だって、これ、もともとのハムスターとなんら
変わらないじゃないですか」
「こりゃあ、よく見ろ。身体に斑点があるじゃろう」
「そういえば、体中に紋様が」
「ほうれ、それは、わしの家の家紋じゃ」
「これ、まさか・・・」
「紋のあるハムスター、いわゆるモンスターじゃ」
「・・・・・・・」
悲劇の最後、それは助手の辞表だった。


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