第36回テーマ館「モンスター」



違い Ryo [2000/12/11 01:27:21]

私は今まで、多くのモンスターを狩ってきた。
たとえ人間に害を与えていなくとも、容赦なく、確実に息の根を止めてきた。
モンスターは悪しきもの。
モンスターはこの世に存在してはならないもの。
それが、私の中の真実だった。
だが、今、その真実は揺らぎつつある。
善良な人間を襲い、殺す殺人者たちは、モンスターとどこが違うのか。
子供と戯れ、遊ぶモンスターの子は、人間の子とどこが違うのか。
他の人間を弄び、いたぶる人間たちは、モンスターとどこが違うのか。
人間に出会い逃げ惑うモンスターは、モンスターから逃げ惑う人間と
どこが違うのか。
昨日、人間の子供を助け出し、親の所まで連れてきたモンスターを見た。
そのモンスターは子供を帰すと、そのまま森の中へと去っていった。
私はそのモンスターを殺すことができなかった。
今日、人里から少し離れた森の中で、一匹のモンスターをいたぶる人間たちを見た。
手足に杭を打ち込んで動けなくし、集団で何度も何度も剣を突き刺していた。
しばらく見ていると、人間の一人がこちらに気づき、剣を渡しながらこう言ってきた。
「よお、あんたもやるかい? スッキリするぜ」
私は剣を受け取ると、その人間の首をはねた。
他の人間たちがこちらに気づき、剣を構えながら何か言ってきた。
その後のことはあまりよく覚えていない。
気づいた時には、その場にいた人間を皆殺しにしていた。
その後、そのモンスターの縛めを解き、傷を癒し、そしてそのまま宿まで帰ってきた。
何故そのようなことをしたのか、私は今でもわからない。
ただ、体が勝手に動いていた。
何故わからないのだろう? 自分のことなのに。
……明日も朝早い。さっさと寝よう。
モンスターを狩ることが、私の使命なのだ。今日のようなことは二度と
あってはならない。
目覚めた時、この邪魔な思考が消え去っていることを願う。


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