第36回テーマ館「モンスター」



会いに アキツ [2000/12/12 14:28:09]

雪の降る夜に一人、闇夜を歩いている。まだ闇が深い時代。
雪を踏みしめる足が爪先から冷たくなって感覚も無くなって
きていることを彼女は不安になりながらも歩いている。
首を振った。違うのだ。この不安は別のところからきているの
だ。寒いのはいつものことではないか?
なにより、これ以上歩く意味などあるのだろうか?
彼女は何度も自分に言い聞かせていた。
私が会いに行くのは愛しい人だと。
・・・たとえ魔物であるあの人でも私は構わない。
冷たい空気を吸い込んで不安を少しでも薄めようと努力
してみる。
あの人は自分のことをバケモノ、モンスターなどと言う。
でも怖くはない。青い空のような瞳を見れるなら私は私が
魔物と化してもいいのだ。狂気であるとはわかっている。
あの人に会うごとに私が私ではなくなり人という存在からも
遠ざかっていることが自分でもわかっている・・・わかって
いるが止められないのだ。誰かに助けて欲しいなど思わない。
何かを願って叶うならばあの人に私を連れ去ってほしい
と頼むだろう。

きっと明日も同じようにこの道を歩いているだろう。


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