第36回テーマ館「モンスター」



20世紀のモンスター<ポエム> 長谷 風香(はせ かぜか) [2000/12/17 01:07:26]

 電車に乗った。
 ラッシュ・アワーの山手線。
 艶々しい中吊り。
 どれも変わらぬ雑誌の広告。

 <<今世紀最大の、モンスター特集>>
 <<ヒトラーから酒鬼薔薇まで>>

 そんな雑誌が目に飛び込んだ。

 「ヒトラー、果たしてモンスター!?」

 第一次大戦後の賠償金「1320億金マルク」。
 インフレによるドイツ国内の混乱。
 〜彼らの民族性は、ことごとく打ち崩された。〜

 そんな時に一人の英雄現われた。
 否、彼らにゃ英雄に見えただけ。

 ただ、それだけのこと。

 ただ、それだけのこと。

 疲弊しきった民主主義。
 誰かに縋(すが)った民主主義。
 誰が首相に選んだのさ?
 当時のドイツ国民さ。

 打ち崩されたプライドは、
         いつか大きな力となって、
                   彼らの上に、降り注ぐ。

 民族意識に縛られて、
         無益な殺戮繰り返す。

 ああ、我ガ人類の、心の狭さ。

 モンスターなんて、いっぱいあるよ。

 セルビア人の心の中の「ナザール公」
 アイルランド人の心の中の「マイケル・コリンズ」
 ユダヤ人の心の中の「約束の地」
 みんな、大いなる幻影かもしれない。

 考え方一つさ。
 さぁ、新世紀を迎えよう!

 20世紀のモンスター、
 それは、ぼくらの無関心。
 それは、ぼくらの依存心。

 かも、しれない。



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