『テーマ館』 第30回テーマ「無題」
全部ぶっこわす 投稿者:ゆびきゅ 投稿日:11月03日(水)11時48分24秒
クリスマスはもうとっくに過ぎていたし、その1週間後に2150年もすでに終わり
を告げていた。このニュー・レイスターの光の牢獄の中で私の第三発音器官がつ
ぶやいた「Happy New Year!」の音は、無慈悲を体現する黒一色の監視者に皮肉
な笑みを浮かべさせた。
惑星破壊及び知的生命体殲滅の罪。
暗黒の視界の中に闖入する閃光。地球破壊のイメージが、いまや妄執のように私
の意識の前面に浮かび上がってくる。すべて私がやったことだ。
死−厳密な意味での−を前にして、私は自分の生を痛いほどに感じている。胸を
弱々しく叩く心臓の音、脳を駆け巡る液体の流れ。その規則正しいリズムは、私
と地球人が結局は同じ”生命”でつながれていたことを教えてくれると同時に、
私の目に何もかもを、私自身さえをも今までと違ったものとして見せてくれた。
水槽に水が満ちていくように、目に見えて時が流れた。想像力が編んだ夢は、
監視者のうちひしがれた溜息のような宣告によって打ち破られた。
死刑執行。
全然その気がないのに、暗闇を抱合する監視者と心のこもった握手をしてい
たことに気づき、我ながら驚いた。私は答えを求めるべくして、質問した。
「超総督は?」
「釈放されたよ」