『テーマ館』 第30回テーマ「無題」


星を剥く者 投稿者:ゆびきゅ  投稿日:12月14日(火)00時56分37秒

      
...唯一、種としての進化の方向性の制御・選択が可能であったにも関わらず、
いや、そのことによってこそ、自らを絶滅に追い込んだわけです。悪性の腫瘍の
如く肥大化の一途を辿った脳と反対に、各筋肉組織・感覚器官は退化を続け、内
臓及び骨格の構造は、肉食獣としての本能が理性(彼ら曰く)の舵から解放され
つつあった種としての末期においては、その暴力的かつ自己破壊的な生態を支え
ることができないまでに簡素化されてしまっていたのです。生存競争の敗者とな
るべく。
彼らが束の間の繁栄を誇った”失われたもの”紀において、食物連鎖のピラミッ
ド−この比喩に使われる固有名詞こそヒト種の”頂点”であることは皮肉ですが
−の頂点の玉座には、惑星生命体ガイヤが鎮座していたわけですが、彼らヒト種
の絶滅の要因の最も注目すべきものとして、このガイヤの弱体化が挙げられるで
しょう。現在、古生物学者たちによって、このガイアの一時的機能不全の原因の
調査が進められていますが、一部で唱えられているような、「ヒト種の盲目的破
壊衝動」にその原因を帰するという仮説は、真剣に考慮するに値するとは到底思
われません。発見と同時に全世界の注目を集めたヒト種の「遺書」とも言うべき
各文献は、核開発及び生命工学における端緒に至った経緯とその応用が語られて
いますが、その粗末で誇大妄想気味、意味不明とさえ言える内容は、それを「神
話」と判断する者の支持を大いに集める結果となっています。
いずれにしても、この惑星の歴史において、彼らの出現・繁栄・絶滅のページは、
研究するに値しないとさえ言えるほどごく僅かであり、挿話と呼ぶことこそが相
応しいでしょう。そう、我ら恐竜の歴史にとっても。