『テーマ館』 第30回テーマ「無題」


ダンデライオン −花葬ー 投稿者:SOW・T・ROW  投稿日:12月20日(月)13時05分51秒

      
      いくつもの花に囲まれて、愛しき君は眠っている。内容
      あの日、何故、君を殺したのだろう。
      もう、夢のように、存在は記憶しているのに内容を忘れている。
      でも、あの時僕は君を憎んでいたのだろう・・・。

      どこかの岬・・・ありふれた灯台・・・僕が最初に考えたのは、
      ここで誰が自殺したんだろう、だったと思う。
      君と口論をしていたと思う。
      僕は、ただ無言で君を愛していた。干渉も、接触も、あまりしたくなかった。
      崇拝だったのかもしれない。だとしたら、多分、僕が間違ってた。
      君は、それが許せなかったのかい?
      愛すればこそ、相手の気持ちを知りたかったの?
      だったら、何も言わない僕は、君と愛し合う資格が無いのかもしれない。
      君と話そうと思って来た岬。僕を試そうとその身を汚した君が立つ岬。
      首を絞めたんだと思う。君の体中の力が抜け、その重みに手が耐え切れなくなって
      離してから、僕は君を殺したんだと知った。
      ただ呆然と僕は君を連れて家に帰った。その時、僕は初めて庭の花を見た。
      君が育てていたダンデライオン。君はしきりに違うと言ったけど、
      僕には日本の向日葵との違いがピンと来なかった。
      その花を、僕は初めて綺麗だと、切なく思う感情を抱いた。
      君が、僕達が出会った夏に、思い出が溢れる夏に咲くようにと、愛した花。
      だから、埋めた。愛しき君と愛しき花。二つが揃う花園。
      それから、花は育った。幾年かして、庭中がダンデライオンになった。
      ある日、外から庭を見ている茶色いコートの男の人が立っていた。
      彼は、庭の中央にそびえるダンデライオンが最も美しいと言った。
      その花は、僕もとても好きな形をした花だった。
      毎日毎年その花を見ることを楽しみにした。

      アイとニクシミって、全然違うのに、でも、決して偏ることが無い。
      愛していくと、その分、憎しみが増える。
      きっと、カードの表裏なんだ。僕達が愛し合った数と憎み合った数は、
      多分同じぐらいなんだろう。相殺しているようで、逆に増長し合う。
      なら、あの時、最も憎んだ君のことを、僕は最も愛していたんだろうか。
      きっとそうなのだろう。
      だって、僕の大好きなその背の高いダンデライオンの花は、
      あの時、最も憎んだ君の死に顔に、とても良く似ているから。