第47回テーマ館「鬼」



裏側 Viva [2002/11/25 20:49:28]


彼女は学校のアイドルだ。
容姿端麗、頭脳明晰。才色兼備とはまさに彼女のためにある言葉だ。
誰にでも分け隔てなく優しくて、勉強もスポーツも万能。
人が嫌がる仕事を率先してこなし、かといって利用されることもない。
そして、彼女をねたんでいる奴にいじめられることなくうまく立ち回っている。
要は勉強ではない頭のよさも兼ね備えているんだ。
こんな人間がこの世に存在するなんて、
嫉妬・妬みを超えてただただ感心するしかない。
こんな高嶺の花の彼女にあこがれて何が悪い?
ボクは周りの反対を押し切って彼女に告白することにしたんだ。
「突然驚かしてドキドキしているところに告白すれば、
わけのわからないうちにうなずいてしまうかもな」
数少ない告白賛成の友人のこの助言を元に、ボクは彼女の家を
突然訪問することにした。

彼女の自宅前―。

彼女が自宅から出てきたところを捕まえて
「好きなんだ!!」と叫ぶボク。

・・・あざ笑う彼女。
「また、私の見てくれにだまされた男が一人・・・」
そこに学校の天使の笑顔はない。今目の前にいるのは

―鬼。

ボクは呆然と立ち尽くしたまま彼女の声を遠くに聞いていた。

「あんたみたいな冴えない男、私が相手にすると思う?
 私に釣り合う男を捜すために学校でいい子の仮面をかぶっているって
言うのに、どうしてあんたみたいなのが来るんだろう・・・。
冗談じゃないのよね。いい男ならともかくさ、あんたみたいに
ちびでつまんなくて、勉強も出来なくて、鈍くさい男!
あっちいってよ!自宅前まで来てずうずうしい!
あ、ちょっと!このこと、学校でしゃべったら・・・分かるわね?
まぁ、あんたの言うことと私の言うこと、どっちを信じるって言ったら、
みんな私の言うことを信じるでしょうけど」

最後に鼻で笑うと彼女は
「出かけるから」と大通りに向って歩き出した。
しなやかな足ときらめく髪をなびかせて。

鬼・・・彼女は鬼・・・
天使の仮面をつけた鬼。
ただ好きだと言っただけのボクにこんなにひどい言葉を浴びせるなんて。
ボクの思い焦がれていた3年間はなんだったんだ。
鬼女め!!

・・・。いや、彼女は鬼じゃない。
本当の鬼は、ボク―。

気が付くと、ボクの両手は彼女の白くて細い首を強く、強く
握り締めていた。

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