第53回テーマ館「幻」



夢と希望と幻と Ery [2004/04/02 12:04:51]


夢は・・・がんばれば勝ち取ることが出来る。
希望は・・・いつでも持つことが出来る。
幻には・・・いくらがんばっても 望んでも 掴めない。

人はなぜ望むのだろう。
諦めるしか方法が無くても なぜ掴み取ろうとするのだろう。
望めば望む程 それが惜しくなるばかりだというのに。

私は まさにそこにいた。
人に頼らないと生きていけない存在になってしまっていた。

怖い こわい コワイ  誰か・・・助けて・・・

私は バスケで将来を期待され レギュラーを取った。
1年での初の快挙で 試合に出るはずだった。
しかし、大型トラックにひかれ、足を切断しなければならない重傷を負った。
希望の光を失ってしまったんだ・・・

一人っきりで・・・・・
支える物が何一つとして無くなってしまった・・・
大切なものを・・・体の一部を捧げてもいいから・・・・
私に足をください・・・

私はその晩、眠れなかった。
月明かりが眩しくて、辛かった・・・

バサぁっっ・・・・・

!!!???

「だ・・・れ・・・?」

私の目の前には、綺麗な蝶の翼を生やした女の人がいた・・・
「私は魔女・・・あなたに呼ばれてやってきた」
「わたしが呼んだ・・・?」
「体の一部を捧げてもいいから足を頂戴って 願ったでしょ?」
「あ・・・あの時・・・」
「ね 願い叶えてあげるから あなたの体の一部を頂戴・・・」
「・・・・はい!!」
身を捧げてもよかった
これで・・・バスケが出来るなら!!!
「なんでもいいわよ その長く美しい髪の毛でも・・・・ その艶がある爪の切れ端で
も・・・」
「じゃっ・・・じゃあこの・・・髪の毛を・・・少しだけっ・・・」
「了解・・・」

じゃきっっ・・・・・・

しゅううううううううぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・・

「あ・・・・足が片方・・・戻った!!でもなんで・・・片方なの?」
「それだけじゃ・・・・片方のみよ」
「じゃ・・・爪の切れ端を・・・・!!」
「了解・・・」

しゃきっ・・・・・

しゅうううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・・・・

「足が・・・両方戻った・・・!!」
「くすっ・・・」
「ありがとうございます!」
「もう・・・望むものはないわね?」
「はい!」
私は嬉しくって飛び上がって喜んだ。

朝。
「う・・・そ・・・・」
私は何か汚らしいものでも見たようだった。
「なんで・・・なんで・・・・足がないの・・・!?」
恐怖でふるえていた・・・・・
「いやあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

今わかったような気がした。
いくら自分の大切なものを渡しても 幻に変わるだけだと・・・

幻は・・・いずれ 私の体をも蝕み始めるのだろうか・・・

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