第54回テーマ館「〜ごっこ」



刑事ごっこ しのす [2004/07/22 05:21:40]


「刑事ごっこしょうよ」
「うん、いいけど」
「じゃあ、俺、刑事。お前、犯人な」
「ぎくっ。なんで犯人?」
「3日前の夜8時に宮坂は殺された。その時、お前はどこにいた?」
「いきなり、殺人で、アリバイ調べか。
でもなんでお前が刑事で−」
「こら、答えんか」
「そんな机叩かなくても」
「まあまあ、カワさん、そんな怒鳴らなくても」
「おいおい一人二役か」
「お前の田舎のお母さんの暖かい味噌汁の味を思い出してみろよ」
「泣き落としかよ」
「前略サトシ様。夏の暑さが厳しくなりましたが、元気にやっていますか」
「かあちゃん!」
「きもっ、抱きつくな。で、3日前の夜8時だ。どこにいた」
「戻ったか。3日前のことなんて覚えてないね」
「じゃあ、明日会える?」
「そんな先のことはわからない」
「ってお前は、リックか。小学生のくせにカサブランカかよ」
「じゃあそんな偉そうに尋問してるけど、刑事さん、
3日前の夜、何食べたか、言ってみろよ」
「…」
「3日前の昼食は?」
「…給食」
「中身は」
「…」
「人間の記憶なんてそんなもんだろ。じゃあ3日前の8時になにをしていた?」
「…」
「3日前の8時に宮坂が殺されたんだ。宮坂のことは知っているな」
「…」
「黙秘か?答えないと心証が悪くなるぞ。凶器のカッターはお前のだ。
お前が宮坂にいじめられていたという証言もある。さ、吐いてしまって楽になれ」
「ううう…、げろげろげろっ、
ってなんでお前が刑事になってるんだよ」
「いや、たまたま」
「畜生、警察をなめやがって。じゃあ聞くぞ。
俺が大事な人からもらった消しゴムをどうした?」
「っていきなりかよ。しかもちっちゃい事件だな」
「事件には大きいも小さいもないんだ。そうでしょ、ワクさん」
「って「踊る」かよ」
「チーン。ワクさん、死んでたんだ」
「おいおい」
「さあ、消しゴムをどこにやった」
「よく探した?」
「探した。2時間目まで確かにあったんだ。
中休みに外へ遊びに行って、戻ってきたらなくなっていた」
「俺は知らないよ」
「嘘つけ。お前しか犯人はいない。俺の消しゴム、ぱくるのはお前くらいだ。
吐け。吐いちまいな」
「決めつけんなよ。何で俺がぱくるんだ。
お前が妹にもらって大事にしている消しゴムを」
「ふっふっふ、語るに落ちたな」
「なに、お昼にぱすたな」
「俺は「大事な人」からもらったと言ったが、「妹」からもらった消しゴムとは言って
いない。
消しゴムには大きく妹の名前が書かれていた。それが印象に残っていたんだろ。
これぞ被疑者しか知らない秘密の暴露だ」
「ぎくっ、ばーれーたーか」
「さあ、返せ」
「わりぃ、食っちゃった、ぱくっと」
「ええっ」

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