第54回テーマ館「〜ごっこ」



夏の思い出 はなぶさ [2004/08/17 00:56:16]


夏休みもあと少しという感じになってきた、八月の午後のこと。蝉が庭の木に
どこからか飛んできて思いっきり鳴いている。母は台所で素麺をゆでていて
私は畳に寝そべりながら、蚊取り線香の煙の消え行く先を眺めている。

玄関先で英二くんが私を呼んでいる。彼は私の幼馴染みで、今でも遊び友達
なんだが、今日は遊ぶきにならない暑さが上空を漂っている。畳から少しでも
離れると、熱気で病気になりそうだから。そのままの体勢で声だけを出した。
あとで迎えに行くからさ、あとで遊ぼうよ。

虫取り網を持ったまま、英二くんは返事をして帰った。ぼうっとしていたので
了解だということ以外の悪態は気にならなかった。夏休みって何をするにも
気持ちがゆるんだ感じが好きだ。

朦朧としていた私に、母が近づいて言った。リストラされたんだから、
いつまでもくよくよしてんじゃないよ。夏休みごっこでもしてるのかい。
英二さんも先月から無色だそうじゃないか?



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