第82回テーマ館「雪」
大雪 しのす [2012/02/12 23:09:30]
今年は大雪だ。
昨日雪かきしたのに。
凍った地面の雪は氷の塊のようだった。
道路脇には雪がうず高く積み上げられている。
裏道は雪で歩けないくらいだ。
朝起きたら、また数十センチ積もっている。
屋根にもすっかり雪が積もっている。
このままでは家がつぶれかねない。
「屋根雪を下さないと」と私は夫に言った。
夫はこたつの中に入ってテレビを見ていた。
体を丸めて年寄りくさい。
私を見るとめんどくさそうに頭を振った。
「大丈夫さ。家はつぶれないさ」
「でもテレビで見たわよ。屋根雪でつぶれてるの。
このままだとこの家、つぶれてしまう。
この家を建ててからずいぶん経つから」
「うーん」夫は嫌そうな顔をして視線はテレビの画面に釘づけのままだ。
「これが終わったら」
「お願いしますよ」
夫は二階の窓から屋根に出ると雪をおろし始めた。
嫌々やらされているというのが見え見えだ。
私は大きな雪玉を作ると夫めがけて投げつけた。
雪玉は夫の頭を直撃し、夫は屋根から転がり落ちた。
そして私が雪かきして露わになった地面の上に落ちると動かなくなった。
「あなた、大丈夫」
私は夫に駆け寄る。
夫は打ち所が悪くてもう息をしていなかった。
屋根雪おろしをしていて、誤って落ちて死ぬというのもテレビでよくやっている。
家でゴロゴロしているだけの粗大ごみが始末できてよかった。
若い頃ソフトボールをしていたことが、今役に立った。
雪玉の中には氷の塊が入っていたのだが。
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