『テーマ館』 第14回テーマ「星に願いを/新年」
星 by ひふみ
空は厚い雲に覆われ、あたりには滅亡の兆候である鋭い稲光が轟く。
「この星もここまでか・・・・」
遠くで地面が割れる音を聞きながら、彼女はぽつりと呟いた。
かつては、光にあふれた宮殿も、今は見る影もない。華々しい栄華を誇った文明も、星の
寿命という運命の前にあっけなく滅び去ろうとしている。
「皇后・・・」
宮殿の最上階で、ひとり星の最後をみとろうとする彼女の背中に一人の老人が声をかける。
「HAKOBUNEの準備は整いました・・・・どうしても乗ってはいただけないのですね・・・・」
老人はそう言うとじっと彼女を見るが 、彼女は振り返る事もせず、ただ静かに星の滅びる様子を
眺めるだけだった。
・・・・・数分後、宮殿の地下から大きな船が浮かび上がると、それは物凄い速度で厚い雲をかきわけ
空の彼方へ消えた。誰もいない宮殿のなかで、船が残した光の帯をじっと眺めた後、大きな地鳴り
をたてる大地に向かい、彼女は大声で叫んだ。
「ちっぽけな命だが、おまえの最後をみとどけてやる!!お前一人だけではない!!だから、寂しがるな!!」
あたりは嵐のような暴風雨にみまわれている。雨にうたれ、風に弄ばれながらも彼女はテラスにまっすぐに
立ち、最後のその星を眺め続けた。
・・・・・・・・そして、星は滅びた・・・・・・
遠くで鳴る除夜の鐘を聞きながら、彼女は家路を急いだ。普段は真っ暗なこの通りも、今日はまだ暖かい光を
放っている。普段は遅く迄起きていることを許されない子供たちも、今日は特別なのだろう。そんなことを考
えながら、彼女の口許はゆるく微笑む。
ふと空を見上げると、満天とはいえぬまでも、最近見ることの無かった位、多くの星が瞬いているのに気づいた。
突然、一つの流れ星が目の前を流れていく、あっという間で願いを言う暇もなかった、と彼女は思ったが、
願うことなど特にないことにすぐに気づくと軽い苦笑いを浮かべた。
再び背を丸めて足をはやめるが、すぐに立ち止まり空を見上げる。
・・・・名残惜しい冬の夜空、再び星が流れることはなかったが、彼女には何故か懐かしい気がした。
(12月28日(日)13時09分14秒)