『テーマ館』 第14回テーマ「星に願いを/新年」
粗製濫造 by kon
星に願いを 1
そいつは、小柄だが、ゴツゴツした感じがした。
童顔で、愛くるしい顔ではあったが、表情はいつも堅く、
口元も目元もいつもこわばっていた。
でも、彼の最大の特徴は、何と言っても鼻だった。
とても鼻が高かったのだ。いや、見ようによっては、
とても低かった。
彼の仕事は、一種の冒険家と言えるだろうか。
ある時には、奴隷商人にとっつかまって、ロバのようにこき使われたり、
ある時には、無謀にも小舟で海に出て、鯨との壮絶な戦を繰り広げたりし
たそうだ。
今年、彼から、オルゴール付きの年賀状が届いた。
あけましておめでとう。
今年こそは、ゼベットじいさんの言うことをよく聞いて、
いい子になって、ぜひ人間になりたいです。
曲はもちろん「星に願いを」
星に願いを 2
はっけよい、残った、残った、残った、残った、
初場所が始まる、お相撲さんは、皆、白星に願いを託している。
星に願いを 3
はっけよい、残った、残った、残った、残った、
初場所が始まる、トトカルチョをしている者は、皆、星にお金を賭け
ている。
星に願いを 4
みつるはながた二世号に、チームメートを全員詰め込んで、
花形がやってきた。
「ばん君、星君は、まだ来ていないのか?」
「もう少し待ってくれ、星の奴は必ずやってくる。」
「新年早々、この花形みつるが、出向いて来たというのに、
一体どういうことなんだ。」
「お〜い、みんなあ〜。」
「おお、星の奴がやってきおったわい。」
「みんな、遅れてすまない。」
「星よ、一体何があったんだ。」
「とうちゃんとちょっと・・・・」
「また、オヤジさんと何かあったのか。」
「君たち、そんな話は後にして、早く試合を始めよう。」
「あきこねえちゃんともちょっと・・・」
「なに、あきこさんだと、星君、話をきかせてくれ。」
「実は、昨日、とうちゃんと、あきこねいちゃんと、俺の三人で、
除夜の鐘を聞きに行ったんだけど・・・・」
「いいかヒュウマ、人には、108つの煩悩がある。それを
払うために、108つの鐘をうつのだ。野球の玉の縫い目も
108つ、そこには嘗て、夢を果たせなかった男たちの、熱い
想いが込められておるのだ、わかったか。」
「とうちゃん、馬鹿なこと言わないでくれよ。108つの煩悩と、
野球の玉の縫い目とが関係あるわけないじゃないか。ただの偶然だよ。
大体アメリカに108つの煩悩なんて概念があるはずないじゃないか。」
「何を生意気な。バシッ」
「ほら見てくれよ」
ヒュウマは、口をニーっと開いた。前歯が二本欠けていた。
「星よ、あいかわらず、お前のオヤジさんは激しいのお。」
「その帰りが、また大変だったんだ。」
「ヒュウマよ、あの輝く星、あれが巨人の星だ。あの星に
誓うのだ。」
「とうちゃん、バカいっちゃいけないよ。あの星は、北極星
だよ。巨人の星なんてあるわけないじゃないか。」
「こざかしいことを言うんじゃない。ドスッ」
「あばら骨を、3本、へし折られちまった。」
「星よ、何と、凄まじいオヤジさんなんだ。」
「家に帰ってからも大変だったんだ。」
「ヒュウマ、大リーグボール養成ギブスはどうしたんだ。」
「とうちゃん。あんなもの、身体に悪いだけだよ。
あれのおかげで、成長が止まっちゃって、プロ野球では通用
しない、軽い玉しか投げられなくなっちゃうんだから。」
「屁理屈をこねるな。バキッ。」
「顎の骨を砕かれたちまったよ。」
「星よ、何て、壮絶なオヤジさんなんだ。」
「朝ご飯の時も、大変だったんだ。」
「ヒュウマよ、お前は、必ず伝統ある巨人軍に入るのだぞ。」
「とうちゃん、俺は、巨人より、オリックスの方がいいなあ、
イチロウもいるしさ。」
「そんな我が儘は、ゆるさん。ガシャ。」
ちゃぶ台がひっくり返る。
「とうちゃん。とうちゃんは、伝統ある巨人軍ていつも言うけど、
ジャイアンツの名前の由来知ってるのかい?」
『日本初のプロ野球チーム、日本東京野球倶楽部の愛称は東京ジャイアンツ
である。この愛称に決まった経緯なのだが、一行がアメリカ遠征に向かう
前に、フランク・レフティー・オドウルという元ニューヨークジャイアンツ
の選手が、愛称を付けるうに勧めた。しかしなかなか愛称が決まらずに、そ
のうちに、一行は、アメリカへと旅だった。一行がアメリカに到着すると、
「東京ジャイアンツ来る」と、新聞に書かれた。これはオドウ氏が宣伝に
間に合わせるために、かってに付けたものだった。(文芸春秋参照)』
「と、いう具合に、安直なものだったんだよ。」
「うるさい!バシッ、ボキッ。」
「両腕と、両足をへし折られた。」
「よし、それじゃ、試合を始めるとするか、ところで、星よ、お前、
投げられるか?」
「どうやら、無理らしい、医者の話じゃ、再起不能ということだ。」
「そうか、それは残念だな。まあ、ベンチで試合を見ていてくれ。」
「さあ、始めるぞお。」
「星君、あきこさんはどうなった?」
星に願いを 5
「ううう、さぶい、さぶい。寒中水泳大会なんて参加しなければ
よかった。ううう。さぶい。さぶい。テレビ局も取材に来ている
し、今更引き返す訳にもいかないし・・・」
皆さん、初日の出とともに、寒中水泳大会がはじまります。
「うひゃあ〜。冷て〜。俺、今日、風邪気味で、少し
熱があるんだよなあ〜。」
寒中水泳同好会の皆さんが、この冷たい海へと向かいました。
「やばい、頭がもうろうとしてきた。波に、波に、さらわれる・・・」
大変です、若者が一人、波にさらわれた模様です。ボートが
今救助に向かいました。
「寒さで、身体がもう動かない。ゴボゴボゴホ。塩水が・・・
俺は、このまま死んでしまうのか? 死んでしまうんだな・・・」
『しっかり、しっかりしなさい。』
「誰だ?」
『私は、流れ星です。』
「流れ星だって?」
『そうです。宇宙の大海を流れ流れて、とうとうここへ辿り着きました。』
「なんだか、HP巡りをしている、そのさんみたいな奴だなあ〜。」
『一つだけ願い事を叶えてあげます。何かありますか?』
「でも、流れ星に、願い事をする時って、星が流れている間に、3回
続けて言わなけりゃ、ダメなんじゃないの?」
『あれは、私に向かって3回唱えよ! ってことなのです。』
「そうなのか、それじゃ言うよ。ここから助けて下さい。ここから助けて下さい。
ここから助けてください。・・・・・」
『確かに願い事を承りました。』
「おい、しっかりしろ。おい。」
「あれ、ここは・・・?」
「助かったんだよ。」
「助かった? そうか、流れ星が助けてくれたのか。」
「おい、だいじょうぶか? 幻でも見てたんじゃないのか?」
「幻じゃないよ。ほら、ちゃんと、流れ星を握っているもの?」
「そりゃ、ヒトデだよ・・・・」
(12月30日(火)05時19分00秒)