『テーマ館』 第14回テーマ「星に願いを/新年」



 一月下旬  by はなぶさ


      「さっき捨てたものは何?何を捨てたの?」
      「何のこと?」
      「時期遅れの初詣に行くときには持ってただろ。」
      「初詣っていうか、七草のときに神社に行ったときに?私が持ってた?」
      「確か持ってたと思う。それが何かを聞こうと思ってたんだ。」

      初雪が降る街を歩きながら会話してたら、急に彼が変なことを言い出した。私
      が何を捨てたのか、彼も分からないのに、執拗に気にしている。私が何を捨て
      たっていうのだろう。その話は聖火ランナーの走る姿が見えた瞬間、忘れられ
      去られた。聖火ランナーに声援を送り、彼と少し追いかけたりした。

      その夜私は夢を見た。何かを捨てたという喪失感いっぱいの夢だ。自分がよく
      通る道や、昔通った学校や、公園を探している夢だ。ただ、それが何なのかわ
      からない夢。私は泣いていた。

      私は次の日の朝早く、近所の神社に行った。まだ、薄暗く誰もいない境内を、
      散歩した。ここに来たときには持ってたのか。しばらく歩いたが、分からない。
      振り返ると、金星が美しく私を見ていた。私は手を組んで胸に置き、目を閉じ
      て願った。私が無くしたものを見つけられますようにと。

      その日の夕方、彼と食事に行ったときも聞いてみた。彼はそんなことは言って
      ないと言う。私にとっては大きい一言だったのに、彼にはすぐに忘れるような
      些細なことなのか。もう誰にも私の捨てたものは分からないのだ。こんなこと
      は忘れればいい。そう思ったが、彼と別れたあとも私の心にしこりのように残
      り続けた。

      私は何かを捨てたんだ。捨てたということだけが今私を締め付ける。

                                  
(01月21日(水)00時04分43秒)