第56回テーマ館「星」



スターになりたい しのす [2005/03/06 06:59:46]


「えー、みんなは大きくなったら何になりたい?」
教壇で大学出たての高間先生が児童たちにたずねた。
「サラリーマン」「保育士さん」「俺、ゲームデザイナー」「ウルトラマン」
児童たちは口々に叫んでいた。
「由香は何になりたいかな」
由香はつまらなそうに外を眺めていた。
彼女は大人びた少女で、他の児童たちとは違った雰囲気を醸し出していたのだ。
「あたし?」由香は凛とした視線を高間先生に向けた。
高間先生はちょっとどぎまぎしたようだった。
「あたしは、スターになりたいわ。全世界の人々の注目を浴びる
大スターにね」
教室は騒然となった。

「ユカ、ユカ!」
一瞬意識を失っていたようだ。
小学校の時のことが今頃頭に浮かぶなんて。
「ユカ。ユカ。…大丈夫か」チャーリーが叫んでいた。
「オーケィ」
「呼んでも返事がないので…心配したぞ」
「大丈夫。ミッションはクリアできるわ」
「君に地球のすべてが…かかっている。頼んだぞ…」
「ユカ、…がんばって…」
ヘルメットごしに数々並ぶ計器類に目をやる。
ディスプレイには迫り来る巨大隕石が映っている。
まるでハリウッド映画だわ。
いろいろ手を打ったけど、もう私のこのシャトルしか残っていない。
隕石の核に設置した爆弾は不発で、遠隔操作もできない。
もうこのシャトルでつっこんで破壊するしかない。
「…ユカ」
遂に通信機が沈黙した。シャトルは激しく揺れていた。
自動操縦を手動に切り替えた。
「これで終わりよ」

そして彼女は全世界の注目を浴びる中、星になった。

「スターになりたい、もしくはアルマゲインパクト、もしくはパクリマゲドン」 完

戻る