第56回テーマ館「星」



遠い星から しのす [2005/03/12 06:54:20]


宇宙からカプセルが落ちてきて、その中にDVDのようなものが入っていた。
科学者達は研究に研究を重ね、それが映像を収録した物であることをつきとめた。
そしてさらに研究を重ねて、遂に見ることができるようにした。
地球の偉い人々が集められて、それは公開された。
映像ではまずとても若くて美しい女性がたどたどしい英語で挨拶した。
見た目は地球人と変わらなかった。
「はじめまして。私はXXX星のXXXです。
私たちの星ととても似ている星があることを発見して驚いています。
それで今度地球におうかがいしたいと思います。
こんなことを言うのもなんですが、
女性がたいへん多くて人口バランスがとれず困っています。
地球の素敵な男性を紹介してもらいたいと思います」
そしてカメラが引くとたくさんの美しい若い女性たちが手を振った。
「よろしくお願いします」
その後XXX星の様子が流されたが、確かに地球人と大変似ていた。

それを見た偉い人々の間で会議が行われた。
「来るというから歓迎しないと」
「でも美しいけど実は人間を食うエイリアンかも」
「見た目は同じだけどすごくちっちゃいとか」
「映像によれば我々とほとんど変わらないようだ。
手足もちゃんとあるし」
「あんな美しい女性達が配偶者を求めてわざわざ遠い星から来るのだ。
やはり歓迎しないと」
結局会議の結果、もしもの場合に備えて警戒はするが、
地球全体で歓迎することにした。

その事は全世界に知らされた。
人々は驚いたが、歓迎ムードに包まれた。
特に男性達は大歓迎で、ファンクラブまで作られた。
やがて彼女達と結婚したという青年達が現れた。
国連XXX星人歓迎委員会では、そういった青年達の中から
地球代表として相応しい青年達を選んだ。

そして遂に宇宙船が到着する日がやってきた。
世界の偉い人々はもちろん、花婿候補の若者達も待ち構えていた。
世界中の人々が美しい異星人を見ようとテレビにかじりついていた。
宇宙船の扉が開き、異星人達が降りてきた。
注目していた人々はみな、息をのんだ。
彼女たちは遠い星からの長旅ですっかり年老いて、
老婆になっていたのだ。

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