第56回テーマ館「星」



ホシ しのす [2005/03/21 04:48:58]


「奴がホシに決まってる」山さんが眉間に皺を寄せて言った。
「でも奴さん、犯行の時間にはNYにいたんですよ。
どうみても犯行は無理です」川北はなだめるように言った。
「なんだ、NYって。ニューヨークって言えよ。
そこに何かトリックがあるはずだ。奴はガイシャに小さい時からいじめられていたから
な、
積もり積もった恨みが爆発したのにちがいない」
「でも成田を飛行機で出国して、NY、いえ、ニューヨークに行ったのは確かです。
同行者もいて証言しています」
「双子だったとか」
「ちがいます」
「じゃあ三つ子か、四つ子か」川北が首を振る。「そっくりな兄弟でもいなかったの
か」
「奴さん、一人っ子でした。それにニューヨークのホテルで写真を見せて本人だったと
確認済みです。」
「写真といっても外人が日本人を区別できるのか。みんな同じに見えるんだろ」
「でもホテルの支配人は、日本人だそうで、きっちり識別できたそうです」
山さんは腕を組んでしばらく唸っていたが、
「チャーター機を使って一時帰国したとか」
「大統領やハリウッドスターじゃあるまいし、そんなことあり得ません。
実際犯行の日前後に個人で飛行機をチャーターして日本に来た例はありませんでした」
「船で来たとか。密航したとか」
「船では犯行時間に間に合いません」
「後は誰かを雇って殺させたか」
「奴さんとそういう組織のつながりはみつかっていません。暴力団とも接触はありませ
ん。
大体犯行の手口が素人のもので、誰かを雇ったとは思われません」
山さんはお手上げという風に両手を上げた。
「奴だと思ったんだがな」
「あれ」川北がすっとんきょうな声を上げた。「最新の情報ですが、
奴さん、ニューヨークで青い狸のようなものとずっと一緒にいたようです」
山さんと川北は顔を見合わせて同時に叫んだ。「ド○○もん!」
「どこ○○ドアか。これで奴のアリバイは崩せる。しょっぴくぞ」
山さんはそう言うと満足げに笑った。

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