第45回テーマ館「時を止めて」



逆行家族 アライバウンス [2002/05/22 00:56:19]


「お久しぶりです。」
そう言って、帰ってきた実家の門前で最上級の土下座。
お父様は、
「お前は誰だ!お前なんか知らん!」
とスッカリ、ご立腹。ああ、ご立腹。
それ見たことか。見たことか!
なんてったって、私は、すっかり心を入れ替えたからね。
あの頃の僕じゃないのだからね!
もう、アリの巣の入り口に、爆竹を挿したりしないのだからね。
其処をわかって欲しいのです。
お父様の目の前にいる私は、
もうね、10年前の僕じゃないんだ!
と、言う事です。つまり、やっとの事、出所。
右肩のミッキーマウスの刺青は、わらっているけどね。
けけけ。
狂ったように、毎日毎日、懲りない面々と楽しく笑いあいました。
だから、こうして生きています。ええ。
しっかり罪を償って、相手のお墓にも手を合わせて来ました。
その帰りなのです。ここにいるのは、その帰りなのです。

しかしだね・・。
「お前の顔はみたくない、頼むから帰ってくれ」
と、お父様が震える声で言うので、
もう帰ります。

1お父様の時代

お父様が二十歳の時代には、沢山の電気用品が氾濫していた。
しかしながら、その電気用品の便利さは、既に飽和の時期に突入。
テレビにエアコンが付いています。
そんな商品ばっかりで、
もう、オリジナリティーは皆無。
機能の足し算。それが新製品。そういう時代。

お父様は、そんな電化製品を、お客様に売りつけ生活していましたね!

「もうね、お父様は抜群の営業成績でしたよ。口がうまかったし、人当たりも良かったから!」
昔、お父様と同僚だった、ミスター前橋がそう言う。

過去の先を知りたいのだ。
お父様の過去の先。
だから自分は練りあるく。
過去のルートを。お父様の足跡を追う。

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